中村直史

三島邦彦 16年11月26日放送

161126-02
eblaser
ペンは動く 魚谷常吉

料理人、魚谷常吉。
昭和初期、軍国主義の風が吹く日本で、
家庭料理の本を書いた。

最初の本である『茶料理』では、
懐石料理を、
上流階級の食べ物ではなく、
素材の味を最大限に活かすという
料理の基本に忠実なあり方としてわかりやすく紹介した。

その後も、『酒の肴』『料理読本』など、
本を通じて日本の家庭料理の充実をはかった。

 ペンというやつは、
 なかなか包丁のごとく思うようには動かぬもの。

そう言いながらも魚谷は、
厳しい時代の中で黙々と本を書き、
日本の家庭にたしかな幸せをとどけてくれた。

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中村直史 16年11月26日放送

161126-03
Stijn Vogels
ペンは動く デイビッド・オグルビー

広告の父と呼ばれる、デイビッド・オグルビー。
彼は、すばらしい広告をつくった人とほめられるより、
「売れる広告をつくった人」になることだけを望んだ。

オグルビーの広告づくりはデータに基づいていた。
写真の選び方、文章の配置、文字数まで。
すべてデータに基づいていた。

たとえば、こんなデータ。

 白地に黒の文字の方が、黒地に白の文字より読まれる。

オグルビーの広告において、
黒地に白で書かれた文字はない。

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三國菜恵 16年11月26日放送

161126-04

ペンは動く 羽田圭介

芥川賞作家、羽田圭介。
小説家デビューは17歳。
ある作家の登場に焦りを覚えたのがきっかけだった。

17歳の高校生・綿谷りさの新人賞受賞。

その衝撃に突き動かされ、
羽田は小説家になる練習を始めた。

 文芸誌のバックナッバーをまとめ読みした。
 テストの傾向と対策を練るかのように。

目指す為に、まず、学ぶことから始めた。

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三島邦彦 16年11月26日放送

161126-05
psycho.mato
ペンは動く 東村アキコ

人気漫画家、東村アキコ。

育児、オタク女子、地元で出会った面白い人。
さまざまな視点から漫画を描いてきた。

ある日ペンを動かす中でふと、
ある人のことを思いだした。
自分に「絵」を描くことを教えてくれた、アトリエの先生。
その先生にはもう会えない。
だからこそ、漫画の中に生き生きと描きだそうと思った。

「ウソを描くと紙のなかの先生に怒られるんじゃないか」
計算も、演出も排除して、ペンは進んだ。

漫画の中によみがえった先生の言葉に、
いま、沢山の人が心を揺さぶられている。

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中村直史 16年10月22日放送

161022-01
Lombroso
そのとき聞こえた音楽 ラーメン屋でリスト

日本人の食に関する悲喜こもごもを
情緒豊かに描いた
伊丹十三の傑作「たんぽぽ」。

監督は、この映画のことを「ラーメン・ウエスタン」と
表現していたらしい。

ストーリーの軸は、
とある落ちぶれたラーメン屋の再建。

そして、ラーメン屋の復活を感動的に支えるのが、
日本にもラーメン屋にも食にも関係なく作られた、
フランツ・リストの「交響詩・前奏曲」だ。

ラーメン・ウエスタンなニッポンを際立たせる、ヨーロッパのクラシック。

いかにも伊丹十三らしい組み合わせだ。

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中村直史 16年10月22日放送

161022-02
Dallas1200am
そのとき聞こえた音楽 猿が人間になるときにシュトラウス

作曲家リヒャルト・シュトラウス。
彼は、1896年、ニーチェの著作にインスピレーションを受けて
交響詩を作曲した。
曲の名は「ツァラトゥストラはかく語りき」。

33分にも及ぶ壮大な交響詩は、
一世紀を経た今、世界中のだれもが知る曲となった。
ただし、曲の冒頭のみ。

発端は、映画「2001年宇宙の旅」。
人類の進化を描く鮮烈なシーンで、
このシュトラウスの曲は、高らかにその存在感を示した。
この映画のためだけに生まれたかのような曲だった。

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三島邦彦 16年10月22日放送

161022-04
ayane.
そのとき聞こえた音楽 カラオケボックスで作家は

近頃の歌の歌詞はつまらない、
という人は多いけれど。

作家の川上未映子は
カラオケボックスで
友人達が歌う歌を聴きながら
歌詞を眺めていた時のことを
こう書いている。

 画面に映るどの歌のどの歌詞も、
 深くて、かみしめる意味があるように、思えてしまう。

 使い古しの言葉の中にも、
 見ようとすれば見える一回きりの光のようなものが、
 なくもなかったりして、
 全部の歌詞を、じっと見る。

どんなものも新鮮に感じる。
そのまなざしが、
作家にはある。

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三島邦彦 16年10月22日放送

161022-03
Tom Simpson
そのとき聞こえた音楽 ゴジラが街にやってくる

松やにのついた革手袋で
コントラバスの弦をこする音を録音し、
速度を調整しながら逆再生する。

これが、ゴジラの鳴き声の作り方。

このアイデアを出したのは、伊福部昭。
映画「ゴジラ」のテーマ音楽を世に生み出した作曲家だった。

はじめ伊福部は「ゴジラ」の音楽をオファーされた時、
そのスケールの大きさに衝撃を受けたという。

 えらい事になった、こんな大きな音楽をどうやって作るか?

伊福部は脚本を読み込み、
ゴジラが誕生したという南方の地域の民族の言語、
音楽、歴史までを丹念に調べ、作曲にあたった。
そうして生まれたのが、「SF交響ファンタジー」。
ゴジラのテーマとして、日本で最も有名な交響楽となった。

あの音楽と、あの鳴き声。
長い時を経た今も、ゴジラが現れるたびに、
伊福部が生んだ音は私たちの胸を高鳴らせる。

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三國菜恵 16年10月22日放送

161022-05
mai
そのとき聞こえた音楽 夕方帰巣BGM

夕方になると、日本のあちこちでメロディが聞えてくる。

ある街の商店街のスピーカーからは、
「夕焼け小焼け」。

ある街の緑豊かな公園からは、
ドヴォルザークの「遠き山に陽は落ちて」。

ある街の公民館からは、
ビートルズの「イエスタデイ」。

ある街の防波堤からは、
警報にも似たけたたましいサイレンが鳴り響く。

それらは帰っておいで、の合図に思えるが、
もともとは、畑仕事にいそしむ人への
仕事終わりを告げる合図だったとも言われている。

きょうも、おつかれさまです。
肌寒くなってきたので、早くお家に帰りましょう。

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中村直史 16年7月30日放送

160730-01

音楽に生きる人 新庄清貴さんと小宮大輔さん

国と国の境で
国籍の壁をこえて、
みんなでいっしょに歌いたい。

そんなことを夢想した人たちがいる。

日本と韓国の国境ぞいの島、
対馬生まれの
新庄清貴(しんじょう・きよたか)さんと小宮大輔(こみや・だいすけ)さん。

夢は計画に変わり、計画は行動になった。
日本と韓国のアーティストも動き出した。
「対馬ボーダーアイランドフェスティバル」

新庄さんはこんな風に語ってくれた。

  国境の島が、友好の架け橋になる。 
  困難はいっぱいあるけど、ぜんぶ越えられると思うんです。

国境の壁を越えようとする思いが、
人の気持ちの中にある
いろんな壁を乗り越えようとしている。

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