KYR
わび 前衛 利休
完全は不完全である。
不完全は完全である。
千利休は息子の少庵が
茶室につづく露地を掃除するのを見ていた。
掃除を終えたとき、利休は
「まだきれいになっていない」と
何度もやり直させた。
「父上、これ以上は無理です。
小枝一本、木の葉一枚も地面にはありません」
利休はたしなめた。
「露地の掃除はそのようにするものではない」
利休は一本の木に手をかけて揺すりはじめた。
すると、はらはらと紅葉が舞い、
露地に散った。
そこには人工の完全な美しさではなく、
自然な不完全な美しさがあった。