薄組・石橋涼子

石橋涼子 15年12月27日放送

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掃除のはなし 泉鏡花のそうじへのこだわり

幻想的な作風と美しい文体で知られる作家の泉鏡花は
極度のキレイ好きでも有名だ。

生ものは一切口にせず、お菓子も火で炙ってから食べた。
大好きなお酒は、燗を通り越して
ぐつぐつ煮立ててからいただいたという。

そんな鏡花だから、掃除へのこだわり方も徹底している。
常に家の中がきれいに掃き清められているのは当然として、
階段は高さによってホコリの量や汚れ方が違うと考え、
上、中、下段それぞれに専用のぞうきんをつくった。
もちろん、台所のふきんも戸棚用から食器用まで、
様々な用途に合わせて分けられている。
さらには、二階のホコリが落ちてくると言って
一階の天井板の目地に紙を貼ったという。

ここまで徹底されたら周りの人間はさぞ困っただろうと思うが、
意外なことに、夫婦の仲は終生睦まじかったし、
鏡花と親しい挿絵画家も「先生の個性」と言う程度で
さらりと受け止めていた。

生涯、一貫した作風の作家らしい妥協の無さと思われたか、
はたまた、デビュー時に畠芋之助と名乗るような
独特な茶目っ気のおかげだろうか。

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石橋涼子 15年11月8日放送

151108-03
matsukawa1971
夫婦のはなし 小津安二郎が描いた夫婦

小津安二郎の映画「お茶漬けの味」は
裕福だけれど、かみ合わない夫婦の物語だ。

真面目で努力家で無口な夫と
派手好きでお嬢様育ちの妻。
味噌汁かけごはんが好きな夫と
それを下品だと言って怒る妻。

育った環境も価値観もまるで違うふたりは、
話し合うことも歩み寄ることもせず
互いに距離を置く。
そんな夫婦の関係が変わるのが、
深夜にお茶漬けを食べる場面だ。

家事が苦手な妻と夫でたどたどしく準備をし、
ふたりで食卓につく。
夫が美味い。というと、
妻も美味しいわ。とつぶやく。
ひとりごとのような会話から、
わだかまりが溶け、ふたりの本音がこぼれ始める。

食卓を囲む風景が仲直りの象徴となるのは、
恋人ではなく、夫婦の物語ならではだ。

最後に夫がぽそりと言う。
これだよ、夫婦はお茶漬けの味なのさ

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石橋涼子 15年11月8日放送

151108-04

夫婦のはなし 前島密の家の顔

郵便制度の創始者であり一円切手の肖像・前島密は
先見の明を持ち行動力に溢れる一方、
自他ともに厳しく、真面目で質素な性格だった。

なにしろ、ある時期にテレビ局が
前島密を題材にドラマをつくろうとしたが、
面白みや華やかさが足りないという理由で
企画が途中で没になったのだという。

ところが夫婦で過ごす時間はまた別の印象だ。
歳を重ねても夫婦水入らずで旅行を楽しみ、
家では得意の尺八を妻の三味線と合奏する。
夫婦で映っている記念写真は
一円切手の肖像とは対極の、目じりの下がった笑顔だった。

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石橋涼子 15年10月18日放送

151018-02
モリッティオ
日本語のはなし 食卓の日本語

朝昼晩の食事のたび無意識に口にする
「いただきます」「ごちそうさま」。
この言葉は日本語ならではで、
外国語に訳すのは難しいと言われている。

四季に恵まれ、食材豊かなこの国には、
日本語ならではの食の表現が多い。

刻々と変化する四季に合わせて
季節の食材も「はしり」「旬」「名残」と区別される。
「おすそわけ」も日本語ならではだ。

新米のおいしいこの季節でいうと、
炊き立てのつやつやのごはんを、よそう。

装うとは、整える、飾る、風情を添える、と言う意味。

食材に敬意を払いながら
見た目にも豊かな気分でいただこうという気分は
きっと他の国にもあるけれど、
しっかり言葉になっているのは
うれしいことだと思う。

今日もおいしいごはんをよそって、
さあ、いただきます。

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石橋涼子 15年10月18日放送

151018-07
樹/Tatsuru
日本語のはなし 雨を表現する日本語

雨が多い日本には、
雨を表現する日本語も多い。

突然降り出す激しい雨は、驟雨(しゅうう)。
しとしとと降り続く雨は、地雨(じあめ)。
秋の長雨は、秋霖(しゅうりん)。
同じ長雨でも、すすき梅雨と呼ぶとお月見のころかと思う。

急に降り出した雨は肘でよけるから肘傘雨(ひじかさあめ)
庭に打ち水をするのも人工的な雨ととらえて作り雨。
木の葉からしたたる水滴は樹の雨と書いて,樹雨(きさめ)

季節によって、降り方によって、
また、雨がもたらす物語によって、
意味ある名前がつけられているのは日本語ならではだ。

日本語は、おもしろくて、難しくて、美しい。

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石橋涼子 15年9月27日放送

150927-06
班大貓
お茶のはなし お茶にまつわることわざ

いつものお茶を、ちょっと良いお茶に変える。
小さいけれど確かな幸福を感じる方法のひとつだ。

高級茶といっても、昔ながらの老舗の玉露もあれば
ワインボトルに入った一風変わった水出し緑茶もある。

古いことわざに うどんで茶を食う という言葉がある。
つゆではなくお茶でうどんを食べるということだが、
ただ変わったことをするという意味ではない。
贅沢の限りを味わい尽くした人が、
あえて風変りなことを楽しもうとするという意味だ。

良いお茶はおいしいし、うれしい。
うどんをお茶につけるところまで極めるかどうかは、
あなた次第。

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石橋涼子 15年9月27日放送

150927-07

お茶のはなし ふたつのカフェー

日本の喫茶店文化の始まりは、
1911年、銀座にオープンしたふたつのカフェだった。

カフェー・プランタンは
パリの最先端を取り入れた文化人のための店。
カフェー・パウリスタは低価格で
誰でもコーヒーを楽しめる庶民派カフェ。

まったく異なるふたつの店が同時に開店したことで、
多様な人と価値が集う喫茶店文化が花開いたのだった。

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石橋涼子 15年8月30日放送

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涼菓の話 藤原定家のかき氷

現在も夏の甘味の代表であるかき氷が、
平安時代に存在していたことはご存知だろうか。

当時のかき氷は、天然の氷を刀で削ったもので、
枕草子や源氏物語にも登場する。
夏、貴重な氷を口にすることができたのは、
一部の限られた貴族だけ。
暑さ対策であると同時に、特権階級のステイタスでもあったのだ。

新古今和歌集の編纂で知られる鎌倉時代の歌人
藤原定家は、56年に渡って日記を書き続けた。
後鳥羽上皇に召し上げられた絶頂期の日記には

氷を頂いたので、自ら削って涼を楽しんだ。

と言った内容が上機嫌に綴られている。
その後、後鳥羽院との関係は険悪になり
謹慎を言い渡されるまでに至る。
しかし、院の失脚により再び返り咲く。
60代半ばの、ある夏の日の日記はこんな内容だ。

久しぶりに氷を贈られた。
昔は宮中に上がるたびに氷を味わったものだ。

公家社会の中で浮き沈みを繰り返し
酸いも甘いも味わい尽くしたであろう定家は、
貴重な夏の涼を口にして、何を思ったのだろうか。

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石橋涼子 15年8月30日放送

150830-06

涼菓の話 カルメンの氷菓子

カルメンと言えば、
すべての男を惑わせる危険な女の代名詞だ。

カルメンの原作は、
スペインを訪れたフランス人学者の一人称で語られている。
語り手である学者もカルメンの魅力に惹かれたが、
ドン・ホセのように破滅するほどには溺れなかった。
それは、カルメンとの出会いが
灼熱のスペインの太陽の下ではなく日没時だったからかもしれない。
ふたりで食べたのが肉料理ではなく氷菓子だったからかもしれない。
学者はこう語る。

 今日は一つ、悪魔の侍女とひざをつきあわせて
 氷菓子を食べてやれ。
 旅先ではどんなことでもやって見なくては。

いやいや、冷たい氷菓子で心身ともに涼んだおかげで
カルメンの熱に囚われずに済んだのではないでしょうか、先生。

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0歳11か月の育児の話し。

かあさん、復職をいたしました。
じろさんは慣らし保育期間中に慣らし終わらず、
見切り発車でフルタイム保育です。
が。そこは図太い次男、
かあさんのハラハラを気にも留めず
ふつーにフルタイム保育になじみました。
さすがです!

と思ったら、復職一週目の週末に
長男すーさんが発熱しました。
あらら。
そして二週目になると、じろさんも発熱。
かあさんも発熱。

わたしもか!ブルータス!

世の中はインフルエンザ真っ盛りの1月です。
家族全員予防接種は受けていたものの、
真っ先にインフルエンザの感染検査ですよ。
そして明らかになる驚きの新事実!

かあさんだけインフルでした…。
なんで私だけ…。

さてさて。
保育園は伝染性の病気だと登園制限の規則があります。
当然といえば当然ですが。
インフルエンザだと解熱から3日間登園禁止、とか。

じろさんが通っている保育室は
家族にインフルエンザ感染者がいる場合も
登園禁止です。
園児本人が潜伏期間中の可能性があるからで、
故に園へのキャリアになる可能性があるからです。
当然の措置ですね。

だけどね!
絶賛インフルり患中の母と
まだ感染していないと思われる0歳11か月が
一つ屋根の下で引きこもっているのは
あまり良い環境とは言えないよね!

マスクをした上で自らに咳を禁じて
(咳き込むときはベランダへ)
赤子と距離をとりつつ
家事も育児もなんとかやり過ごして数日。

無駄だと思った予防接種も無駄ではなく、
症状が軽かったのが幸いして
家族には伝染さずにインフル危機は終了しました。

やれやれ。

ちなみにじろさんは
赤ちゃんが一度はかかるという突発性発疹でした。
ザ・発疹という感じのぶつぶつが出たので
せっかくなので記念写真と撮ってしまいました。

 

11か月

 

ちなみにちなみに上の写真は、
「おかあさんと半分こね」
という約束で買ったケーキです。
すーさんが半分こしてくれました。
右の皿がすーさん的「半分」です。

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