薄組・茂木彩海

茂木彩海 15年10月18日放送

151018-04

日本語のはなし 月を表す日本語

豊作の祈願と、収穫の感謝をするささやかな秋のお楽しみ、お月見。

お団子は毎晩夜を照らしてくれる月に感謝をするために、
すすきはお米の豊作を願って飾られる。

古来から月を愛でる習慣があった日本には
月の状態を言い表す名前が、数多く存在している。

新月から7日目の月は、弓に似ている、「上限の月」。
14日目は、満月に少しまだ足りない「小望月(こもちづき)」。
そして、18日目の夜に浮かぶ月の名前は、「月待ち月」。 

月が出るのをいまかいまかと待ち望む
そんな気持ちごと、月の名前にしてしまう。

日本語のやわらかさが、
今夜の月をもっと優しい光にする。

topへ

茂木彩海 15年9月27日放送

150927-01
CaDs
お茶のはなし 「お茶の水」の由来

江戸時代のはじめ、江戸城の外堀を建設するために
山を切り崩したところ、高林寺という寺の境内から湧き水がでた。
その水を徳川将軍のお茶を沸かす水として献上したところ
大変お気に召したという。

その場所こそ、いまの「お茶の水」。

お茶のためには、水からこだわる。
日本人は昔からおいしいお茶を淹れるための苦労を厭わないようだ。

topへ

茂木彩海 15年9月27日放送

150927-02
border.garaku
お茶のはなし カフェは自己表現

カフェにとって
おいしいコーヒーや紅茶と同じくらい重要なのが
居心地の良い空間作り。

90年代半ばに起こったカフェブームの渦中、
鎌倉にカフェをオープンし、以来
観光客からも地元の人からも愛されている店、
カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ。

生豆から焙煎するコーヒーはもちろん、
ブラジルまで足を運んで選ぶボサノバのレコードに
こだわり抜いたインテリア。お茶の味を邪魔しないお菓子。

マスターの堀内隆志さんはいう。
「アーティストが絵を描くように、
僕にとってカフェは自己表現のひとつでした」

そのこだわり、ひとつひとつが集まれば、
お茶はもっとおいしくなれる。

topへ

茂木彩海 15年8月30日放送

150830-03
jasonlam
涼菓の話  スイカのようなコーヒーゼリー

東京、南千住駅から徒歩7分。
東浅草二丁目の交差点近くにある喫茶店、『カフェ・バッハ』。

ここに昭和43年の創業から作られているコーヒーゼリーがある。

コーヒーゼリーはふつう、ミルクを掛けたり、
シロップを掛けたりして食べるものだが
『バッハ』のコーヒーゼリーはひと味違う。

ガラス製のコンポートに流し固められたゼリーの上に、
どっしりと濃厚なブラマンジェが重なっているのだ。

スプーンですくいあげ、黒と白のコントラストを楽しみながら
口へ運べば、2つの味わいが口の中で溶けあって
贅沢この上ない。

このコーヒーゼリー。
実は、メニューに並ぶのは夏の間だけ。
その理由を店長の山田康一さんはこう語る。

ゼリーに旬があるかどうかはまた別にしても、年中あると、
なんとなく感動が薄れてしまいますので。
やっぱり、スイカみたいな感じで、夏本番になるとなんとなく食べたくなる。

ほろ苦い大人の思い出で夏を締めくくるのも
悪くないかもしれない。

topへ

茂木彩海 15年8月30日放送

150830-07
オーイシ
涼菓の話  わらび餅のわらび

わらび餅の歴史は古く、
寛永20年に書かれた「料理物語」にはこんな記載がある。

粉一升に水一升五合もいれ、よく溶きてこねそうらいてよし

簡単なレシピだが、実はわらび粉は
10kgのわらび根からわずか70gほどしか採れない貴重品。

いまはサツマイモなど、別のデンプンで代用するのが主流になっている。

本物のわらび餅はねずみ色をしているというが、はたして。
夏が終わる前にお目にかかりたいものだ。

topへ

茂木彩海 15年6月28日放送

150628-01

お米の話 雲水のお粥

行く雲と流れる水のようにその地にとどまらず
修行をする行脚僧を、雲水という。

その雲水たちが欠かさず食べるのが、お粥。
その功徳は「粥有十利(しゅうゆうじり)」と言い、10個にものぼると言われている。

一、肌つやがよくなる
二、気力・体力が湧いてくる
三、老化を防ぎ若さを保つ
四、食欲を抑え、食べ過ぎない

…などなど。

お米をいただくのに一番シンプルな方法は
心とからだに一番シンプルで大事なことを教えてくれる。

topへ

茂木彩海 15年6月28日放送

150628-02
cyclonebill
お米の話 隆慶一郎の握り飯

脚本家である隆慶一郎は小学生のころ、
夏休みになると毎年一人で長野市の祖父の家へ帰郷していた。

滞在中よく山へ登っていたのだが
道なりに登るのも飽きてしまい、大胆に林を分け入ってしまったある日。

ふと気づけばあたりはうっそうと茂る森の中で、
帰り道などまったくわからない。焦る少年に雨まで打ち付け、不安をあおる。

ポケットを漁ると昼に食べ残した握り飯がひとつ。
一口だけ噛み締め、もったいないので何度も噛んでいると、
米が甘いことをはじめて知った。落ち着きを取り戻し、
なんとか知っている道にたどり着いたのは夜も深くなったころ。

隆は言う。

 うまい米とうまい味噌汁があれば何もいらない。
 これはこの時の迷子の後遺症にちがいない。

topへ

茂木彩海 15年5月24日放送

150524-02
arch-hiroshima
あいさつの話 野村謙二郎、最後の挨拶

入団3年目に一度、その後は優勝と縁がないまま引退した
元広島カープの野村謙二郎。
低迷が続き、客席もまばらだった球場が
自分の引退試合で満員となった。

球場に駆けつけたファンに向かって、野村は最後にこんな挨拶を残している。

 こんなにたくさんお客さんが入ってくれると楽しくないですか、皆さん!
 僕は引退しますが、カープは新しい一歩を踏み出した気がします。
 今日集まっている子供たち! 野球はいいもんだぞ! 野球は楽しいぞ!

未来のカープを担う子供たちにストレートに投げかけた最後の挨拶は、
会場にいた子供たちに届き、その家族に届き、
いまや球場を連日満員にする新生カープの誕生に繋がっている。

topへ

茂木彩海 15年5月24日放送

150524-03
carlota
あいさつの話 フラワーカンパニーズの挨拶の歌

1998年10月、とあるロックバンドが解散の危機を迎えていた。
フラワーカンパニーズ。男4人、名古屋で結成されたバンドだ。

結成後、トントン拍子で東京へ進出。
CDデビューを果たし、人気もそれなりに出ていたが
それなり、故に煮詰まってしまい
バンドのコンセプトも定まらないまま、演奏が悪い、歌詞が悪いと
メンバーの間でお互いの評価を下げ合っていた。

ギスギスした関係の中で迎えた日比谷野外音楽堂でのライブ。

そこで歌われた10枚目のシングル、「元気ですか」。
未来の自分に向かってこんな挨拶を贈る歌だ。

 お元気ですか お元気ですか 未来の俺 未来の君は
 ほがらかですか すこやかですか 未来の風 未来の日々は
 笑ってますか 夢見てますか 未来の俺 未来の君は

ボーカルの鈴木圭介は後のインタビューで
このライブが終わったら解散しようと思っていた、と語っている。

それを思い止めたのは、歌う途中、未来の自分から
「元気ですよ」と小さくとも、確かな挨拶が
聞こえたから、なのかもしれない。

topへ

茂木彩海 15年4月26日放送

150426-01
stardust69
ねむりのはなし 滝本淳助の夢

夢を見ると、なにかと解釈をつけたくなってしまうもの。

しかし、いい夢には、理由なしに納得させられてしまう
強い情景があるものだ。

そんな夢の一例として、カメラマンであり
長年、眠りの中で見た夢を記録し続けている滝本淳助の夢を
ひとつ、ご紹介したい。

 街で僕の前を歩く、女性の靴のかかとを支える部分が
 水槽になっていて、それぞれ金魚が泳いでいる。
 今年の夏の流行りなのか、と思う。

topへ


login