ダンスのはなし 土方巽のことば
日本独自のダンスに、暗黒舞踏というジャンルがある。
確立させたのは土方巽だと言われているが、
彼はこんな言葉も残している。
自分の肉体の中の井戸の水を一度飲んでみたらどうだろうか。
ところが、みんな外側へ外側へと自分を解消してしまうのですね。
天を目指すバレエとは真逆に、
座り込み、床に転がり、身体全体で表現される土方の舞踏。
身体の奥底から絞り出されたその動きは、
土方の生き方そのものを表している。
ダンスのはなし 土方巽のことば
日本独自のダンスに、暗黒舞踏というジャンルがある。
確立させたのは土方巽だと言われているが、
彼はこんな言葉も残している。
自分の肉体の中の井戸の水を一度飲んでみたらどうだろうか。
ところが、みんな外側へ外側へと自分を解消してしまうのですね。
天を目指すバレエとは真逆に、
座り込み、床に転がり、身体全体で表現される土方の舞踏。
身体の奥底から絞り出されたその動きは、
土方の生き方そのものを表している。
図書館の話 冬眠図書館
18種類の架空の仕事と、その従業員のインタビュー集。
タイトルは、「じつは、わたくしこういうものです」。
この中に、一風変わった図書館が登場する。
なんでも、その図書館は冬の間だけ小さな森の中に夜通し開いていて、
お夜食としてコーヒーと、パンと、シチューがふるまわれるという。
司書は、そのシチュー当番を任される重要な役職だ。
冬眠図書館は
冬眠するように本を読むための図書館です。
誰にも邪魔されず一人、本の世界にこもる。
本好きの夢が、ここにある。
風の話 「多分、風。」
冬が終わり、耳元をあたたかい春風がかすめると、
なんだか懐かしいような、甘ったるい気分になる。
サカナクションの楽曲、「多分、風。」。
畦 走らせたあの子は 多分 風
焦らせたあの仕草は 多分 風
自転車であっさりすれ違った「あの子」と「自分」。
その瞬間に起きた「風」を
実はお互いを気にしている「空気」として描いている。
風走らせたあの子にやや熱い視線
焦らせたこの季節に 連れて行かれたら
風が起こるのは、そこに何かのエネルギーがあるから。
それが恋だとしても、おかしくないのかもしれない。
風の話 風の妖怪かまいたち
日本では昔から、摩訶不思議な出来事が起きた時、
その出来事に名前をつけ、妖怪の仕業だと考えていた。
たとえば、外へ出て冷たい風に触れると
知らない間に太ももや手の甲などにあかぎれができる。
これは、かまいたちという妖怪の仕業。
冷たい風もようやく春風に変わる3月。
かまいたち達も、
気持ち良い風を受けながらまどろんでいるころだろうか。
手のはなし 松浦弥太郎の手
指先と手を常に清潔に。
これは文筆家、松浦弥太郎が定めた
「100の基本」の中の33番目の基本である。
ものをさわる、仕事をするなど、
手というのはとても大切な道具です。
一番上等で大活躍する道具として、
指先と手の手入れはくれぐれも抜かりなく。
松浦に倣い、たまには休めた手をじっと見つめ、
ねぎらいの言葉を掛けてあげるのも良いかもしれない。
手のはなし 自然の手仕事
『沈黙の春』で知られる作家、レイチェル・カーソン。
海洋生物学者でもある彼女は、著書の中で自然を丁寧に描写し、
そのまなざしは、雄大な自然にはもちろん、枯葉の下の小さな虫にも注がれる。
自然のいちばんの繊細な手仕事は、
小さなもののなかに見られます。
彼女の最期の手記、『センス・オブ・ワンダー』に残された
この一節。
自然が生んだ造形を「手仕事」
と表現する彼女の言葉には、
その「小さなもの」を、見事な出来栄えの工芸品を扱うように
実際に手にとり、近くで眺めてみてほしいという
想いが込められているようだ。
Mugu-shisai
宇宙のはなし 三島由紀夫の解釈
三島文学としては異例の
宇宙人やUFOが登場する小説、「美しい星」。
物語の主役は、埼玉県に暮らす四人家族。
地球で暮らしながら自分たちは宇宙人である
という自覚を持っていて、
人類滅亡の危機を救うべく奮闘する姿が描かれる。
この小説を書く数年前、私は「空飛ぶ円盤」に熱中してゐた。
しかし、どんなに努力しても、円盤は現はれない。
そこで私は、「空飛ぶ円盤」とは、一個の芸術上の観念に
ちがひないと信じるやうになつたのである。
宇宙にあこがれながらも、一方で
「空飛ぶ円盤」は観念であり、芸術なのだと説く三島の解釈に
なんとなく納得してしまうのは
宇宙をテーマにした芸術作品がこの地球に星の数ほど存在するから。
これからも、私たちは夜空を見上げ、宇宙を想い、
またあたらしい作品を生み出していくのだろう。
宇宙のはなし 野口聡一の言葉
アジアを代表する宇宙飛行士、野口聡一。
宇宙での経験談としてこんな感想を述べている。
最初に驚くのは、動くものは止まって見えて、
止まっているものは動くことかな。
謎かけみたいですけど、この二つは大きいと思います。
時には凝り固まった常識を捨て、違う目で物事を見る。
宇宙にだって、大切にしたい教訓は溢れている。
Ashley Coombs
ことばの贈りもの 女心をつかむコツ
ショーン・ペンが、かつての人気ロックスターを演じた異色の
ロードムービー、「きっとここが帰る場所」。
ファッションの趣味も好きな歌手もまったく異なるロック少女に
恋をしたが故、相手にしてもらえず落ち込む少年に、
ショーン・ペン演じる主人公、シャイアンは
ゆっくり、優しく、こんなことばを贈る。
女心をつかむコツは時間をかけること。
彼女のそばにいて、一緒に時を過ごせ。
大事なのは、安心してもらうことだ。
具体的な行動を起こすのではなく、
ただそばにいるというアドバイスは、
少年にとって、ちょっと意外でありながら
かけがえのない助言となったに違いない。
今日は、クリスマス。
大切な人のそばにいること。それこそが、
聖なる夜にふさわしい、いちばんの贈りものなのかもしれない。
北京老佟
のりものの話 車いす技師 安大輔
競技用車いすの設計技師、安 大輔。
担当するのは、車いすテニスで初のプロ転向を果たした国枝慎吾。
もう10年の付き合いになる。
国枝の口から不満の言葉を聞いたことはないが、
「完璧だ」と言われたこともない。
安は言う。
その時その時に最高の1台を作らないといけない。
でもそれを作った瞬間に、また新たな課題が出てくる訳です。
だから彼の車いすはずっと未完成のまま。
体の変化に合わせるように、車いすも変わっていく。
乗り物が体の一部に感じられるほど、アスリートは自信をつける。
それがどんな自信なのか。国枝はこんな言葉を残している。
車いすは、自分にとっての足だ。
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