薄組・茂木彩海

茂木彩海 16年3月27日放送

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qooh
桜のはなし 桜色の着物

お酒を飲みながら目で楽しんだり、
桜餅にして舌で味わったりするのと同じように、
布を桜色に染め上げて、着物にする。
これも昔からの日本の習慣だ。

桜の染色に必要なのは、意外にも花びらではなく、樹皮や、枝。

綺麗な桜色に染め上げるには、
桜が咲く前の木を使うのが一番だという。

その理由について、染織家で人間国宝でもある志村ふくみは言う。

 1年間じっと色を貯めていた桜の幹に宿した、生命の色をいただく

ほのかに色づく桜色を身にまとえば、
儚い命の力を借りて、春の喜びをより一層感じられるだろう。

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茂木彩海 16年3月27日放送

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Japanexperterna.se
桜のはなし 牧野 富太郎の目

ようやく訪れたお花見のシーズン。

お花見、とは言うものの
果たして花をしっかり見ているかと言われれば
怪しいのが本音ではないだろうか。

 花の着き方と開き方。
 花の部分的組み立て方とその形状。
 各部分の数と大きさと色と匂い。

日本の植物学者、牧野 富太郎の手にかかれば
お花見だって、こんなに本格的になる。

 単に見るばかりでなく、それを写生して絵にすれば
 さらにはっきり知ることができてよろしいのである。

自身を“植物の精だ”と語るほど花を愛した牧野。
この春は彼を見習って、本当のお花見、してみませんか。

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茂木彩海 16年2月21日放送

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yoppy
お酒のはなし 田村隆一

アガサ・クリスティーやエラリー・クイーンなど
海外ミステリーの翻訳家としても名高い詩人、田村隆一。

生粋のお酒好きとしても有名で、朝食に赤ワインとステーキを嗜んで、
午後からはお気に入りのウイスキー、オールドパー
の水割りを飲んでいたと言われている。

そんな彼が残したお酒にまつわる哲学が、こちら。

 青年の酒、壮年の酒、老年の酒。
 その節がわりに、車窓の風景も変わってくる。
 酒を飲むことは旅をすることだ。

次はどんな景色を見に行こう。
そんな気持ちで今宵のお酒を決めるのも悪くない

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茂木彩海 16年2月21日放送

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お酒のはなし マダム・リリー

007シリーズの中で愛されているシャンパーニュがある。
銘柄は「ボランジェ」。ジェームスボンドが英国紳士でなければならないように、
このシャンパンも、英国王室御用達の認定を受けている。

この「ボランジェ」の味を守ったのが、
5代目当主の妻、エリザベス・リリー・ボランジェ。通称マダム・リリー。
夫の死後、第二次世界大戦下でドイツ軍に占領されたシャンパーニュ地方の農園を
ただ一人残った従業員と守り続けた。

マダム・リリーは言う。

 楽しい時や悲しい時、シャンパーニュをいただきます。
 時々は一人の時にも。仲間と一緒の時は必須です。
 お腹がすいていない時はちょっぴりたしなみ、空腹のときには飲むのです。

彼女にとって生活の一部となっているシャンパンは
愛する人との思い出そのものなのだろう。

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茂木彩海 16年1月24日放送

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designmilk 
北欧のはなし マリメッコのウニッコ柄

フィンランドで誕生した誰もが知るファブリックブランド、マリメッコ。
ブランドを象徴する柄に、ウニッコ柄がある。

この斬新な花柄を提案したのは、デザイナー、マイヤ・イソラ。

1964年、“花は生地になるよりもありのままのほうが美しいから”、
という理由で、今後花柄はプリントしないと公表していたマリメッコ。

マイヤはその方針への反発の意味を込めて
真っ赤で情熱的なこの花柄を描き、結果的には
見事コレクション入りを果たしてしまう。

彼女の哲学は、「徹底して失敗する自由」。

失敗を恐れず、自分が信じるものをつくる。

その意思が、温かみの中にも強さを感じるデザインに滲み出て、
今日も世界のどこかで誰かが、華やかなウニッコ柄に元気をもらう。

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茂木彩海 16年1月24日放送

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Noske, J.D. / Anefo
北欧のはなし スウェーデンの歌姫

インテリアでは有名な北欧だが、
国際的に活躍する歌手や女優を数多く生み出している
ことは、あまり知られていない。

1939年、15歳でデビューし、
昨年亡くなった歌手、アリス・バブスもそのうちの一人。

耳が良く、感受性が豊かで、どんな曲でも歌い上げてしまう。
即興が得意で、チューニングも必要なければ不得意なジャンルも無い、
まさに完璧な歌姫だった。
ステージに立てばとんでもないカリスマ性を見せる彼女だが、
普段の生活はいたって普通。

 スポットライトの当たる場所にいるからって
 他人より優れているわけじゃないわ。

彼女の口癖からは、謙虚でありながら
歌いたいものを自分らしく歌うことへの自信が感じられる。

その自信こそが、
いまなお北欧に暮らす人々を魅了し続ける歌声の理由なのだろう。

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茂木彩海 15年12月27日放送

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白石准
掃除のはなし なくてもいいものを考える

掃除とは、捨てること。と一般的には解釈されるが
なくても良いものを選ぶ作業、とも言えるのではないだろうか。

掃除機で有名なダイソンは、
羽根をなくす、という掃除を
ある家電にほどこした。

そこで生まれたのが、羽根のない扇風機。

何十年も続く常識を、一掃することで
また新しい必要なものを生み出していく。

かの、スティーブ・ジョブスもこんな言葉を遺している。

 必要なものを考えるのは重要じゃない。
 必要じゃないものをどれだけ考えられるかだ。

ものの選び方ひとつで、いつもの掃除がちょっぴり楽になるのだとしたら。
この冬、試さない手は無いかもしれない。

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茂木彩海 15年12月27日放送

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掃除のはなし 掃除に必要な音楽

年末ともなると、頭にチラつく大掃除の3文字。
なんとか少しでも気分が乗るように、
掃除をするときは、お気に入りの音楽を流しながら。
そんな人も多いのではないだろうか。

ところが、昔の写真などを整理しているときに、
これまた昔の思い出がつまった曲が流れてしまうと話は違う。

手は止まり、なんとなくぼんやりしながら過去に身を馳せて
気づいたら時間が過ぎている。

そんなとき参考にしたいのが、
暮しの手帖社出版 「暮らしのヒント集」のこんな言葉。

 明日は起きぬけに行進曲をかけてみましょう。
 支度がテキパキとはかどるみたいです。

掃除をするぞ、と決めた日は、
音楽をつかって掃除にぴったりの空気に身を投じる。

そこまでしないと動かない、ずぼらな自分をちょっぴり笑ってやりながら、
大掃除。ぼちぼちはじめてみましょうか。

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茂木彩海 15年11月8日放送

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jafsegal
夫婦のはなし 藤代冥砂が撮りたいもの

自身の妻を被写体にシャッターを切り続けるカメラマン、
藤代 冥砂(ふじしろ めいさ)。

カメラマンと被写体というちょっぴりかわった夫婦のはじまりは
撮影現場。

最初からピンときたわけではなかったけれど
2人の距離を一気に縮めたのが知人と一緒に出掛けたタイ旅行。
こそこそ夜遊びに抜けだそうとする藤代に、
「女の子?今日行くの?」
と声を掛けられて、振り返った瞬間のくったくのない笑顔と、
さげすむわけでもない不思議な佇まいにグっときてしまった。

藤代は言う。

彼女が年を取っていく姿を見てみたい。
そして、できたらそこに自分もいたいなと思った。
生まれて初めて、「未来」に対して
愛おしいという気持ちが生まれたんですよね。

これからも一人のファンとして、夫として
愛する妻の日常をカメラのフィルターを通して切り取っていく。

カメラマンと被写体の幸せな関係はきっと
未来へ歩むたび、より深まっていく。

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茂木彩海 15年10月18日放送

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jiroh
日本語のはなし 虫たちの声

秋になるとどこからともなく聞こえてくる虫の声。

10月にもなるとコオロギ、マツムシ、ツクワムシと
小さな合唱がいたるところで行われている。

西洋人は虫の声を機械音と同じように左脳でとらえるが
日本人は、右脳にある言語脳でとらえることができるように
できているという。

俳句の世界には、虫に関するこんな長い季語がある。

 「藻に住む虫の音に泣く」

実際には声を持たない虫の声も日本人は聴いているのだ。

他にも、「蚯蚓(ミミズ)鳴く」「蓑虫鳴く」などがあるが、
言うまでもなくこれらの虫は声を出すことはない。

秋の夜長に虫たちの声をひとりぽつんと聞いている。
虫たちの言葉は日本語となって脳に届き、
さらには木や草のかすかなざわめきまで
命あるものの声としてとらえようとする。
日本の秋、日本人の秋は繊細で美しい。

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