薄組・薄景子

茂木彩海 19年3月31日放送



畑のはなし 美味しい土の作り方

良い畑は、良い土から作られる。
ならばその土は、一体どこから来たんだろう?

土の始まりはそのほとんどが溶岩。
長い年月を経て風に飛ぶくらい粉々になったところに
運が良ければ微生物が住みつき、それらが死ぬと
またその上に微生物が住みつき、また死ぬ。
土はそのサイクルを繰り返し、何万年もかけてようやく出来上がる。

だから、使う土に微生物がたくさん含まれているかどうかも
良い畑を作る上で欠かせない条件の一つ。

おにぎりのように丸く握り、
軽くつつくとホロホロ崩れていくのが、良い土の証拠なんだとか。

良い土がなければ、良い畑も作れない。
良い畑がなければ、美味しい野菜とは出会えない。

春野菜を頬張りながら、母なる大地に感謝する。

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石橋涼子 19年3月31日放送



畑のはなし 三粒に種

アメリカの実業家であり、政治家でもある
ジェームズ・フィニー・バクスターは、
故郷ポートランドの産業と教育を開拓した人物でもある。
彼の残した言葉がある。

 何度学んでも悟らない人は、
 何度耕しても種をまかない人のようだ。

そう、良い畑にも、蒔かぬ種は生えぬもの。
農業には「三粒に種」という言葉がある。

 一粒は空を飛ぶ鳥のため。
 一粒は土の中の虫のため。
 最後の一粒が、人間のため。

鳥や虫と共存してこそ、おいしい実りを頂けるという考えだ。
春。何かを始めるなら、可能性の種を三粒くらいは蒔きたいものだ。

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石橋涼子 19年3月31日放送



畑のはなし 津田仙の野菜畑

江戸末期、佐倉藩藩士の家に生まれた津田仙(せん)は、
早くから洋学を学び、福沢諭吉らとともに
アメリカ留学も果たした人物だ。

維新後はその英語力を見込まれ、
外国人向けの築地ホテル館の理事に就任した。
そこで、外国人が求める新鮮な西洋野菜が
日本では手に入らないことに気づいた。

ないならば、つくればいい。
アスパラガス、ブロッコリー、パセリ、いちご…。
畑に海外から取り寄せたタネをまき、
英語の農業書を片手に土をいじりながら栽培法を研究した。

さらには、畑で学んだ知識を広く伝えるため、
日本初となる私立の農学校も設立した。

先見の明を持ち、開放的な考え方を持つ津田仙。
若干8歳の娘を日本人初の女子留学生として
アメリカに送り出したことでも有名だ。
娘の名前は、津田梅子である。

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熊埜御堂由香 19年3月31日放送


cyber
畑のはなし 綾町の畑

ふるさと納税で全国の畑の味を
食卓で味わうチャンスもぐっと増えた。
そんな中、注目される街がある。
宮崎県綾町だ。
2008年のふるさと納税開始時には300万円だった
寄付金が、現在では10億円以上の金額が集まる。
それは単に豪華な返礼品に理由があるのではない。

綾町は有機農業に力を入れていて、全国各地から
多くの農業を志す人が移住してくる街なのだ。
そこで役所の人が企画した返礼品は、綾町へのご招待の旅だった。
畑を巡り、美味しいものを食べてもらう。
目的は寄付金額を集めることではなかった。
ただ、綾町を好きになってもらいたい。
そう思い企画して、本当にみんなが綾町を好きになった。

その土地、その産地ならではの
畑の恵みを味わうこと。
それは、まるで、
故郷がまたひとつふえたような
喜びを私たちに与えてくれる。

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熊埜御堂由香 19年3月31日放送



畑のはなし スマート農業

スマート農業と言われるロボット技術や
人工知能を活用した農業が広がりを見せている。
ドローンで無人で畑を点検したり農薬散布する。
人手と労力のかかる収穫をロボットが請け負うなど
すでに実用化されひとの手を大いに助けている。

高価な機材と専門的な知識がないと
始められなかった農業が、
手に届く価格の機材の登場や、
農業の知見がデータ化されることで、
若い人も始められるようになった。
結果的に、農業人口減少の中で、
自給率の確保を助けるいい循環を生んでいる。

そのテクノロジーは、人間の仕事を奪うのではない。
人間が営んできた、
農業という営みを未来へ繋ぐ相棒だ。

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小野麻利江 19年3月31日放送


Steve A Johnson
畑のはなし 悪魔の作物

ヨーロッパを旅行すると、
かなりの頻度で食べることになるのが、ジャガイモ。
しかしジャガイモはかつてこれらの地で、
「悪魔の作物」と呼ばれ嫌われていた。

ジャガイモがヨーロッパにもたらされたのは、16世紀。
南米からスペイン人が持ち帰ったとも、
アメリカからイギリス人が持ち帰ったとも言われている。

現在よりも小さく黒い姿だった、当時のジャガイモ。
見た目が悪く、聖書に載っておらず、
種ではなく種芋で増える。
「悪魔の作物」と呼ばれたのは、そんな所以であった。
しかし寒冷な気候に耐え、痩せている土地でも
育つことから、
ジャガイモはヨーロッパという広大な畑に、
徐々に根づいていった。

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石橋涼子 19年2月24日放送


t-mizo
雪のはなし 雪見鍋

冬の定番の鍋料理。
雪見鍋は、すりおろした大根おろしを大量に入れた
真っ白な見た目も気もちを浮き立たせる。

雪鍋、あわ雪鍋、みぞれ鍋。
呼び方もレシピも様々だが、寒い季節の象徴である雪を
あたたかい食卓で味わう幸福感は、変わらない。

冬の大根は、厳しい寒さに耐えて
その体内に甘味をぎゅっと閉じ込めている。
一本まるごとすりおろして鍋に入れれば
消化にも、美肌にも、いいことづくめ。

せっかくならば、雪づくし。
魚編に雪と書く、冬の魚、タラをメインにした
雪見鍋で、雪見酒。なんて、いかがだろうか。

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石橋涼子 19年2月24日放送


Solstrike
雪のはなし ゆきやこんこ

誰もが歌ったことのある冬の童謡「ゆき」。

ゆきやこんこ、あられやこんこ
ふってはふっては ずんずんつもる
やまものはらも 綿帽子かぶり
枯れ木のこらず 花が咲く

作詞・作曲ともに不詳だが、
100年以上前から小学校の教科書に載っている。

歌詞にある「雪やこんこ」は
「雪よ来い」の意味なのか、
こんこんと降る雪を表すのか不明だけれど、

枯れ木に花を咲かせる綿帽子は
樹木に積もった雪の様子をあらわす。
牡丹雪、花びら雪、綿雪。
ふわふわと降る大粒の雪を植物に例える日本語は多い。

童謡の「ゆき」に凝った言葉はなく、
「ド」から「ラ」で完結したメロディもシンプルだ。
だからこそ、冬になるとつい口ずさんでしまう
不思議な魅力があるのかもしれない。

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熊埜御堂由香 19年2月24日放送


Stagiairec
雪のはなし 雪のカーニバル

ハルビン、札幌、ケベック。
寒い、寒い、この街では、世界三大雪まつりに数えられる
祭典が毎年開かれている。

中でも一番歴史が古いお祭りが
1894年にはじまった
カナダのケベックウェインターカーニバルだ。
暑い、暑い、リオのカーニバルや
ニューオリンズのマルディグラと
並んで、世界第3位のカーニバルとも呼ばれている。

こちらのお祭りは、
雪の彫像で来場者を楽しませることはもちろん、
住民たち自身が冬を陽気に楽しみ尽くすための年中行事。
世界遺産にも指定されている美しい街が
冬を楽しむアクティビティに溢れる。

犬ぞりレースに、カヌーレース、水着姿でのバレーボール大会など
200以上のイベントで盛り上がる。
トナカイやバッファローの串焼きに、
メープルシロップのバーも開かれ、
ケベックならではの冬の味を食べ歩く。
会期中は、郊外にアイスホテルが期間限定でオープンして、
来場者も極寒ステイを満喫できる。

街中が熱気に包まれるこのお祭りは、
ケベックの人の、生まれ育った場所に
舞い降りる雪への愛情がつまっている。

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茂木彩海 19年2月24日放送


justmakeit
雪のはなし 雪をたとえる

雪のように儚い恋。
雪化粧した富士山、などなど。

雪をたとえる言葉はたくさんあるが、
イギリスの詩人、コールリッジはこんな言葉で雪をたとえている。

 忠告とは雪のようなものだ。
 穏やかに降るほど長く消えずに残り、
 心に沁み込んでいく。

たしかに、手のひらに雪を乗せてじっと見ていると
体温で輪郭が消え、徐々に水滴に変わっていき
水滴に変わった雪はいずれ肌に沁み込んでいく。

雪の降る日は、温かい家でお茶を飲みながら
いつか誰かから言われた
アドバイスを思い出してみるのも、良いかもしれない。

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