‘森由里佳’ タグのついている投稿

森由里佳 14年11月9日放送

141109-06

風呂⑥ 自由と平等と銭湯と

慶應義塾の創設者である福沢諭吉。
「学問ノススメ」で、自由と平等を説いたことは有名だ。

しかし、
慶應義塾の向かい、芝の三田通りで、
銭湯を経営していたことはあまり知られていない。

福澤は、著書「私権論」でこんなことを書いている。

 銭湯に入る者は、氏族であろうが、平民であろうが、
 みんな等しく湯銭を払い、身辺に一物なく丸裸である。
 銭湯の入浴には、なんら上下の区別なく平等であり、
 かってにはいっても、出ても自由である。

総理大臣も赤ん坊も、
風呂に入ってしまえばみな同じ人間。

当時の日本に必要だったのは、
政治でも外交でもなく、
裸の付き合いだったのかもしれない。

topへ

森由里佳 14年10月19日放送

141019-04
e_haya
あの人の酒④ 田村隆一

詩人の田村隆一は、紅葉が美しい色をしているのは、
酒が染み込んでいるからだと考えた。

 どうして枯葉にはいろいろな色がついているのだろう
 葡萄酒の色、琥珀の色、モルトのゴールデン・メロンの色
 きっと風によっては飲む酒がちがうのかもしれない

田村の目には、
この色彩が完璧な美として映った。
それは、この詩のタイトルによく表れている。
「秋の黄金分割」。

酒と紅葉に酔いしれる、きもちのいい秋が来た。

topへ

森由里佳 14年10月19日放送

141019-05
monochromia – jeremy chivers
あの人の酒⑤ レイモンド・チャンドラー

酒を小道具に使わせたら右に出るものはいないと言われる作家、
レイモンド・チャンドラー。

「長いお別れ」「大いなる眠り」など彼の作品は、
作家の村上春樹を始め、今も世界中の人々に愛されている。

チャンドラーに、こんな言葉がある。

 良き物語はひねり出すものではない。蒸留により生み出されるものだ。

チャンドラーは、その物語のひとつひとつを、
ウイスキーのようにじっくりと熟成させ、数々の名作を生み出した。

酒と読書に酔いしれる、きもちのいい秋が来た。

topへ

森由里佳 14年10月19日放送

141019-06
barockschloss  
あの人の酒⑥ ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

言わずと知れた天才、
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。

彼は、こんな言葉を遺している。

 一杯のコーヒーはインスピレーションを与え、
 一杯のブランデーは苦悩を取り除く。

難聴など、苦悩の多かったベートーヴェン。
彼の名言「苦悩を突き抜ければ、歓喜に至る」は、あまりにも有名だ。

誰もが知る名曲、交響曲第九番” 歓喜の歌”の誕生には、
幾杯かのブランデーが、一役買っているかもしれない。

酒と音楽に酔いしれる、きもちのいい秋が来た。

topへ

森由里佳 14年9月14日放送

140914-04

夜空を見る人④夜空に恋したゴッホ「ローヌ川の星月夜」

夜を好んで描く画家は少ない。
しかし、ひとりの男が、夜空の魅力に心をうばわれた。

オランダ人画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。
火を灯したロウソクを何本も帽子にくくり付け、明け方まで絵筆を握った。

彼の作品、「ローヌ川の星月夜」は、
ガス灯のあかりや星ぼしの光が、
ローヌ川のみなもにゆらめく様子を描いた、
あざやかな夜の絵だ。

ゴッホは言う。

夜は、昼よりもずっと色彩豊かなのだよ。

topへ

森由里佳 14年9月14日放送

140914-05

夜空を見る人⑤星を選んだゴッホ「星月夜」

夜空に魅せられた画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの作品、
「星月夜」。

夜空にうずをまくように描かれた大きな星ぼしと、
それを突き刺すかのようにそびえる糸杉の大樹。
ゴッホ晩年の傑作である。

とある手記の中でゴッホはこう述べている。

 夜空の星は、町や村を表す、地図の上の点のようだ。
 地図の上の点にはたどりつけるのに、
 なぜ、夜空に輝く点には、たどりつけないのだろう。
 僕らが星へと到達できるのは、死によってだけなのだ。

「星月夜」を描いた約1年後、ゴッホは自らの命を断つ。
彼は死を選んだのだろうか。
いや、星へ行くことを選んだにちがいない。

topへ

森由里佳 14年9月14日放送

140914-06

夜空を見る人⑥星を想うゴッホ「夜のカフェテラス」

夜空に魅せられた画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの作品、
「夜のカフェテラス」。

黒を極力使わず、深みのある青で描かれた夜空に、
星ぼしがまるで花のように大きく咲いている。

星を大きく描いた心情を、ゴッホはこう説明する。

 いつのまにかあんなに大きな星を描いていたんだ。
 どこか遠くの星にもカフェテラスがあって、
 その灯りがここまで届いている。
 何かの理由でこのカフェに来られなくなったら、
 その星のカフェに行こうと思っていたのかもしれない。

ゴッホは今、どの星のカフェテラスにいるのだろう。

topへ

森由里佳 14年8月9日放送

140809-04

走る④ 坂井義則

1945年、8月。
原爆が落ちた1時間半後のヒロシマで生まれた、坂井義則。

東京オリンピックで聖火リレーの最終ランナーに選ばれ、
大観衆の前で聖火を灯した。

日本が、被爆国という歴史を背負ったその日に生まれた坂井。
その彼が灯した、平和の祭典の幕開けを告げる炎は、
戦災からの復興を告げる、力強い赤だった。

坂井は、自分が選ばれた理由についてこう語る。

 無名の青年に、日本中の思いを、未来の平和を託したんだと思う。

オリンピックが再びこの国に戻ってくるまで、あと6年。
その聖火の色は、平和を守り続ける決意の赤に違いない。

topへ

森由里佳 14年7月20日放送

140720-04

その人の生き方④ ジーン・ケリー

類い稀なる芸術センスで、
ハリウッド・ミュージカル映画の黄金時代を築いた男、
ジーン・ケリー。

ダンサー、俳優、振付師。時には脚本家、映画監督として、
世界中の人々を魅了した。

ジーン・ケリーの最後の出演作
「ザッツ・エンターテインメントⅢ」で彼はこう話す。

 The song has ended, but the melody lingers on.
 曲が終わっても、そのメロディーは残り続ける。

映画をしめくくるこの台詞は、
彼の俳優人生をもしめくくる台詞となった。

topへ

森由里佳 14年7月20日放送

140720-05

それぞれの人生⑤ ドナルド・オコナー

アメリカのコメディ俳優ドナルド・オコナー。
第二次世界大戦中、陸軍へ入隊し、
負傷兵のために3000回ものステージをこなした。
その功労から将校への昇格を持ちかけられるが、
オコナーはその話を断る。

幼いころからショービジネスを教え込まれてきたオコナーは、
相手を楽しませるためには、おなじ立場にいるべきだ、と考えた。

兵士として仲間たちに笑顔を届けたオコナーは
除隊後にショービジネスの世界に復帰。
次はエンターテイナーとして世界中の人々に笑いを届けた。

オコナーの代表作となるミュージカル映画『雨に歌えば』。
その中で彼は高らかに歌う。

 Make’em laugh.
 Don’t you know everyone wants to laugh?
 笑わせろ。だれもがみんな笑いたいんだ。

topへ


login