「寝かすだけでもダメなこと」
先日、ちょっとした失敗をした。
いや、失敗というのとはちょっと違うか。
その時なりに・・
または、その年齢なりに・・
とでも言うのか。
ある時口にしたワインを飲み込んだ途端
食道から胃にかけて
ピリピリする感覚になった。
う~む・・・これは・・・
アルコールを口にしていて
こういう言葉が出てくるのも何だが
体に悪そう・・
グラスを前にして心の中で呟く。
赤色もちょっと良い赤みではない気が・・
その時の私の舌が
数日前に飲んだ
とても良い感じのワインに 育てられていたせいもあるかもしれない。
これは・・残して帰ったほうが我が身のためかも・・
心の中で誰に対しての言い訳なのか わからない言葉を繰り出し
その店を出た。
熟成・・。
ああ、よくよく熟成された美味しいのが飲みたいな。
グラスに注いだ時の何とも言えないこっくりとした色合い。
口に含んだ途端、パーっと広がる芳醇さ。
飲み込んだ時の食道を伝って行く滑らかな優雅さよ。
ああ、そういうのがやっぱりいいよねぇ。
などなど、
頭の中でたいしてお酒に強くも無いのに
蘊蓄を垂れてみる。
上手に空気と触れ合わせながら樽で長時間寝かせたワインは
極上の味わいとなるそうな。
はてさて、それじゃぁ私の人間的熟成度たるや
今現在、どの程度のものなのか・・
日々眠ってはいるが
惰眠を貪れば良いということではあるまいに。
そんなことを思いながら 街中を歩く。
そして今年も、終わってゆくのだ。
作・出演:久世星佳 ARTScompany https://earts.jp/artist/seika-kuze/