村上春樹
小説家は、プロの嘘つき。
村上春樹は、
海外メディアのインタビューで
こう語っている。
嘘をつくのが仕事の場合、
誰よりも「真実」について
知っていなくてはなりません。
偽のレンガで、真実の壁を築くこと。
それが僕の仕事です。
真実に飢えている人々が
小説『1Q84』を
超ベストセラーにしているのなら。
いまは、それだけこわい時代なのかもしれない。
メリル・ストリープ
スピーチはむずかしい。
それが、アカデミー賞の受賞スピーチなら、
どうしても感動的な話を期待してしまう。
でも、よくあるのが、
何人も何人も関係者の名前を呼んで
感謝するパターン。
すこし、たいくつ。
そんなあきらめを、
メリル・ストリープはこんな受賞スピーチで
救ってくれた。
大勢の人たちに感謝します。
その人たちの名前を呼ばせてください。
私の名前が呼ばれた時、
両親は飛び上がって喜んだはず。
その興奮をほかのご両親にも味わってほしいの。
メリルのてらいのない、思いやりがあふれた
名スピーチだった。
モスクワオリンピック 日本選手団
戦争が、はじまっていた。
そして、
1980年のきょう、7月19日。
モスクワオリンピック開幕。
そこに、日本人選手はいなかった。
誰一人。
ソビエト軍のアフガン侵攻に抗議し、
50カ国近くが
モスクワ大会をボイコット。
日本政府も、ボイコットの最終方針を決定したのだった。
何年間も、すさまじい努力をしてきた選手たちは、
大会直前で、
国家や政治という強敵に、敗れてしまった。
オリンピックは参加することに意義がある。
この言葉が、
とても重かった、夏。
モスクワオリンピック イギリス選手団
ボイコットするか、しないか。
モスクワオリンピックは揺れた。
イギリス政府は、ボイコット支持を決定。
しかし、イギリスオリンピック協会は屈せず、
独自に大会参加を決めた。
そこから、政府の容赦ない圧力が始まる。
援助は打ち切られ、
企業の寄付も止められた。
選手たちは必死に世論に訴え、
市民の募金に頼った。
滞在費を切り詰め、
試合に合わせて
モスクワ入りを果たしたのだった。
スポーツは誰のものか。
絶対に、国家や政治のものではない。
彼らがそうおしえてくれた、夏。
バズ・オルドリン
一番になること。
その魔力に取り憑かれた彼には、
二番は地獄。
1969年7月20日、アポロ11号、月面着陸成功。
バズ・オルドリンは、月面に降り立った。
アームストロング船長に続き、
史上二番目の人類として。
そこは地獄だったのだろうか。
月面には、100万年は消えない
彼の足跡が、たしかにある。
その足跡には、
二番とは書かれていない。
輝かしい栄誉が刻まれている。
ピート・ローズ
4256安打。
大リーグの通算安打記録をもつ
ピート・ローズ。
俺の脳みそは、いつまでも15歳のまま。
これがベースボールを長く続けられる秘訣なのさ。
やがて現役を引退。
監督をつとめていたとき、
信じられない事件が起こる。
野球賭博に関わり、
大リーグを永久追放されてしまう。
無邪気な15歳のまま、
こんどは賭け事に夢中になってしまったのか。
偉大な記録は消えないけれど、
ピート、元気でやっていますか?
勝海舟
勝海舟が亡くなった時、
最期に遺した言葉は、
コレデオシマイ
作家・山田風太郎は、
「最期の言葉としては最高傑作にあたる」と絶賛した。
その言葉に、
すべてがあり、
すべてがない。
勝の豊かな人生を浮かび上がらせる名文句である。
平賀源内
生まれては消えていく、広告。
けれど、200年もの間、
絶大な効果をあげ続ける広告コピーがある。
土用の丑の日、うなぎの日。
夏場の不人気に悩んだ鰻屋のために、
平賀源内が
考案したと伝えられている。
小さなアイデアが、大きな流れをつくる。
ことばは、奇跡を生む。
平成21年、土用の丑の日に。