五島のはなし(38)
お盆の時期には、
親戚や先祖の話になることが多く、
僕も一時期まわりに聞き込み調査をしては
勝手に家系図をつくったりしていました。
自分のルーツが知りたいというよりも、
たとえば祖父の兄弟たちがそれぞれどんな人生を送ったか
みたいな昔話には、必ずと言っていいほど、
単なる事実とはちょっと違う物語性がまとわりついてきて
それがおもしろいんです。
ガルシア・マルケスの「百年の孤独」という小説は
その事実だけど事実ではないような、
一族の神話みたいなもので埋め尽くされていて、
読むたび、五島のじいさんばあさんの話みたいだと思います。
というか、たぶん世界中のじいさんばあさんの話みたいな話なんでしょう。
そして、そういう話には否応なくのめりこんでしまう魔力があります。
そういえば。
数年前のやはりお盆の時期、母方の従兄弟が、
彼の叔父から見せられた家系図のことを話してくれました。
その家系図は、曾祖父の世代くらいまでは名前が書かれているのですが、
その先は「・・・・」と省略されて、突然「桓武天皇」になってたそうです。
こういう、「アバウトな家系図」みたいなものにも
たまらなく魅力を感じてしまいます。
アバウトかもしれないけど、桓武天皇というところに知恵を感じます。
桓武天王のお母さんは大陸系の渡来人の子孫です。
桓武帝はお母さんの出自が卑しいということで
(人種ではなく単に身分だけの差別です)
誰も天皇になるとは思ってなかったようですが
諸事情あって(語ると長い)即位した、その諸事情も面白いです。
実は意味があったのか!
僕のイメージでは、家系図書いた人が、
「えーいままよ」ととりあえず知っている
名前を書いたようなものだったんですが。
渡来系の母を持つ天皇が
大陸にいちばん近い島人の祖先というところが
ミソですよね。