佐藤延夫 09年9月5日放送

1

幾何学の時間/エウクレイデス

幾何学。
この言葉を聞くだけで
うんざりする人が、どれだけいることだろう。

幾何学の“幾何”というのは、
図形の性質を調べ、証明すること。

たとえば、
ひとつの円に内接する正五角形を作図し、
それが正五角形である理由を証明する。
なんとも難しい話だ。

幾何学は、人類の歴史そのものであり、
古代エジプトの哲学者エウクレイデスまで遡ることができる。

もう一度、勉強してみようかな。
学生たちの二学期は、もう始まっていますね。

1

国語の時間/新美南吉


これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんにきいたお話です。

こんな出だしで始まる物語は、
国語の時間に習った「ごんぎつね」。

作者は、新美南吉。
4歳のときに母親が亡くなり、
8歳で養子に出され、
その1年後、寂しさに耐えられず、実家に戻っている。

童話「ごんぎつね」を書いたのは、18歳のとき。
物語に出てくる兵十(ひょうじゅう)のモデルは、実在する人物。
ひとりぼっちで、いたずら好きな、ごんぎつねのモデルは、
あるいは、南吉本人なのかもしれない。

あのときの国語の教科書は、
まだ、机の中にあるだろうか。


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化学の時間/ラヴォアジエ

化学の実験には、お金がかかる。
それは今も昔も同じこと。

18世紀、フランスの化学者ラヴォアジエは
税金取り立ての暴力組織、徴税請負人の一員となり
実験資金を稼いだ。

そして発見したのが、質量保存の法則。
物質どうしが化学反応をする前後において、
その質量は変わらない、というもの。

ラヴォアジエは、フランス革命後、ギロチンで処刑されるが、
その間際、親しい人にこんな宣言をした。

 僕の首が切れても、可能な限り、まばたきをしてみせる

その実験への執念には、頭が下がる。


3

音楽の時間/グリーングリーン

ある日、パパとふたりで語りあったさ

明るいメロディで始まるこの曲は、
音楽の教科書の定番。
合唱コンクールで歌った人も多いのでは。

教科書に載っているのは、たいてい3番まで。
5番でパパが亡くなってしまうことは
あまり知られていない。

この歌を作曲したのは、
アメリカのシンガーソングライター、
バリー・マクガイア。

彼の曲には、そもそもパパなんて登場しない、ということも
あまり知られていない。


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植物学の時間/牧野富太郎と寿衛子

生まれながらに好きだった。

日本にある植物のうち、
およそ1000種類の名前を付けた植物学者、牧野富太郎。
だが研究に没頭するあまり、家計は破綻した。

文句ひとつ言わず夫を支えたのが、妻の寿衛子。
借金取りが来ると家の前に赤い旗を掲げ、
富太郎に、今帰ってくるなと知らせた。

昭和二年、寿衛子が病に伏しているとき、
富太郎は、新種の笹を発見する。
それを、スエコザサと名付けた。
妻への深い感謝を込めて。

翌年、寿衛子は、亡くなった。
富太郎は、墓碑の周りにスエコザサを植え、
こんな句を刻んでいる。


 家守りし 妻の恵みや わが学び

生まれながらに好きだったもの。
生きながら、好きだったもの。


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算数の時間/ガウス

算数の問題です。
1から100まで全部足すと、合計でいくつになるでしょう。

この答えを瞬時に導き出したのは、
ドイツの数学者、カール・フリードリッヒ・ガウス。
わずか9歳のときのエピソードだ。

最小二乗法、
正十七角形の作図法、
整数論の確率など、
のちに彼は、近代数学に影響を及ぼす
さまざまな発見をする。

さらに24歳で小惑星を発見。
60歳でロシア語に挑戦。
晩年には心霊術にも手を出したという。

努力する天才ほど、強いものはない。

1から100までの合計、わかりましたか?
正解は、5050です。


4

費やす時間/学者たち

日ごろの努力が実を結ぶまで、いったいどれほどの時間が必要だろう。

それは学者たちの功績を見ればわかりそうだ。

数学の難問、
フェルマー予想を証明してみせたアンドリュー・ワイルズは
七年間、研究室に籠った。

キュリー夫妻が、ラジウムの抽出に成功するまで、八年。

メンデルは、ダーウィンの進化論を証明するために
エンドウ豆を225回も交配し、およそ1万3千もの種類を調べ上げた。
費やした時間は、八年。

桃栗三年、柿八年。
あながち、この言葉は間違っていない。

二、三年で諦めるなんて、気が早すぎる。

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