長く生きる① きんさん ぎんさん
赤ちゃんがかわいいのは、
ひとりでは生きていけないから。
そして、年を取れば取るほど、
ひとはまた、かわいくなる。
100歳でスターになった、
双子のおばあちゃん「きんさん ぎんさん」は、
それを証明してくれた。
けれど、2人は声をそろえて。
「若い頃は、もっと、かわいかった」。
長く生きる② 鈴木大拙
年々増え続ける自殺者のニュースを聞いたら、
禅学者、鈴木大拙は何を思うだろう。
長く生きること。
それは、80や90になってはじめて、
わかることがあるということ。
だからあなたも、できるだけ長生きなさい。
著書を英語で書いて、
世界に日本の禅文化を伝えた、
鈴木大拙は、96まで生きた。
「大巧は拙なるに似たり」
長く生きる③ 白川静
白川静は、漢字を愛し、
生涯をその研究に捧げたひとだった。
その偉業は「字」を知るための「書」と書く、
「字書」3部作を完成させたことで名高いが、
ユニークな学説を唱えたことでも知られる。
たとえば、「ラク・楽しいという字は、
神様を楽しませるために振った鈴から生まれた」。
漢字の成り立ちには、
いつも民族信仰があると考えた
白川静がいちばん好きだった漢字は、
「ユウ・遊ぶ」という字。
96歳で亡くなった漢字の神様は、
きっといまごろ、天国で遊んでおられる。
長く生きる④ 親鸞聖人
他力本願という言葉は、
れっきとした、仏教の言葉。
極楽浄土に行けるのは、自分の力ではなく、
他力、つまり仏さまのお力であるという意味だ。
ほんとうはありがたいはずなのに、
違った意味で受け取られることが多い。
他力本願は、親鸞聖人のお言葉。
90歳で入滅し、その30年後に
弟子たちによりまとめられた「歎異抄」は、
「異なるを、嘆く」と書く。
歎異抄は、親鸞聖人のため息
そのものなのかもしれない。
長く生きる⑤ まど・みちお
まだ読み書きを習い始める前の、
小学校にも上がっていない子どもたちに
いちばんなじみのある100歳の有名人。
それはきっと、詩人・まど・みちお、だと思う。
つくった詩は、数え切れない。
「ぞうさん」に、「やぎさんゆうびん」も。
日本人みんなが歌える童謡は、まどみちお、作。
最新刊は4年前に、出版された。
「おじいさん詩集だ」というけれど、
そこにあるのは、少年のようにチャーミングで、
おおらかな表現に満ちた、変わらぬ世界。
つい先日(11/16)、まどさんは100歳になった。
まどさん。どうぞお元気で。
このメッセージを「やぎさんゆうびん」で
お届けできたらと思います。
長く生きる⑥ 杉田玄白
はかないもののたとえ、
カゲロウは、たった数時間で命を終える。
一方で、ひとはいつの時代も
不老長寿を願ってやまない。
江戸時代の医師、杉田玄白は、
長寿について、こう記している。
長生きしても、たいして
驚くようなことはないわけで、
無理に長生きを願うのは、無益である。
当時から長寿で知られた杉田先生は、
よっぽど「長生きの秘訣」を聞かれるのが、
お嫌いだったらしい。
長く生きる⑦ 宇野千代
イギリスで、400歳の貝が
みつかったというニュースが流れた。
女文士、宇野千代が生きていたら、
うらやましいわ、と言うかもしれない。
彼女自身、98まで生きたのに。
なんだか私、死なないような
気がするんですよ。(はははは は)
晩年の宇野千代、お気に入りの言葉。
長く生きる⑧ 小倉遊亀
枯れることは、老いること。
けれど、枯れなくては
うまみを増さないものがある。
それは、梅干し、かつお節。
小倉遊亀(ゆき)は100歳をすぎてなお
絵筆をとり続けた日本画家だった。
一枚の葉っぱが手に入ったら、宇宙全体が手に入る。
まだ日本画家になる前、小倉は
同じ日本画家の大家、安田靫彦(ゆきひこ)に
もらった言葉を矜恃に生きた。
作品の味わいは、枯れてこそ。