2009 年 12 月 5 日 のアーカイブ

五島のはなし(69)

好きな女性のことは
人ごみの中でもぱっと見つけてしまうように、
五島列島という言葉は
どんなにたくさんの文字に埋もれていても
目に付いてしまいます。

本日、12月5日から
東京の三越劇場で幕を開ける
劇団民藝の舞台「神戸北ホテル」。

この主人公の女性、
大関うらら(奈良岡朋子さんが演じています)は、
五島列島福江島の出身という設定なんだそうです!

神戸北ホテル(ちらし)

神戸北ホテル(ちらし)

 
いいですねっ。
すべてのドラマの主人公の出身地は
もう五島ってことにしてほしいですね。
ヒロインの生まれる島、五島。

ちなみにこの「神戸北ホテル」のストーリーですが。
主人公・大関うららは、
戦時中五島で発行されたていた(らしい)
「五島民友新聞」に、とある川柳を見つけ、
その作者に会うために、
五島から遠く離れた神戸に旅立つというものだとか。

ちなみに役者の奈良橋朋子さんが、
戦時中に発行されていた「五島民友新聞」を
お持ちの方がいたら連絡ください!
と書いていました。

どなたかお持ちでしたら、
ぜひ
keijiban@shinchosha.co.jp
までメールしてあげてください。

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佐藤延夫 09年12月05日放送

01-higashiyama
 
「モーツァルトが遺したもの/東山魁夷(ひがしやまかいい)」

昭和を代表する画家、東山魁夷の作品「緑響く」。

そこに描かれているのは、
信州、奥蓼科にある御射鹿池(みしゃかいけ)の風景。

キャンバスを埋め尽くす緑の山々は水面に映り込み、
白い馬が一頭、ためらいがちに、ゆっくり歩を進める。

東山魁夷は、
モーツァルトのピアノ協奏曲ケッヘル488番第2楽章を聴いて
この情景が浮かんだそうだ。

森林は、オーケストラ。
白馬は、ピアノの旋律。

この世には、見て感動できるモーツァルトも遺されている。

今日、12月5日は、
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが亡くなった日。

02-tanigawa
 
「モーツァルトが遺したもの/谷川俊太郎」

詩人、谷川俊太郎の作品「ふたつのロンド」は、
自身の思い出話から始まる。

  六十年生きてきた間にずいぶんピアノを聴いた
  古風な折り畳み式の燭台のついた母のピアノが最初だった
  浴衣を着て夏の夜 母はモーツァルトを弾いた
  ケッヘル四百八十五番のロンド ニ長調
  子どもが笑いながら自分の影法師を追っかけているような旋律
  ぼくの幸せの原形

彼が詩の中に込めたもの。
それは、音楽がもたらす幸せにひそむ寂しさと、死だった。

優雅さの中に、悲しみがある。
だから私たちは、モーツァルトの曲を聴くのかもしれない。

今日、12月5日は、モーツァルトが亡くなった日。

03-nakahara

「モーツァルトが遺したもの/中原中也」 

  僕はもうバッハにもモーツアルトにも倦果てた。(あきはてた)

詩人、中原中也の作品「いのちの声」が発表されたのは、結婚した翌年のこと。
恋人の長谷川泰子とは、とうの昔に別れ、違う女性と一緒になっていた。

中也がモーツァルトを聴いていた、というのは有名なエピソードだが、
ある頃から、陽気な音楽にはもう飽きたよ、と漏らしていたそうだ。

長谷川泰子と別れた小林秀雄もまた、
モーツァルトの弦楽五重奏曲ト短調を聴いて、
「かなしさは疾走する」と評した。

モーツァルトの曲は、昔の恋を思い出させる魔法。
そんなふうに思えてしまう。

今日、12月5日は、モーツァルトが亡くなった日。

04-tachihara

「モーツァルトが遺したもの/立原正秋(たちはらまさあき)」

鎌倉から江ノ電に乗り
20分ほど揺られると、
腰越(こしごえ)駅に辿り着く。

ここは、作家、立原正秋が暮らした小さな街。
魚屋の店先を覗くのが、彼の日課だった。
鵠沼海岸に越したのちも
四季折々の魚を愛し、こんな文章を残した。

  ある朝十時に起きて酒をのんでいたら、
  モーツァルトのピアノ協奏曲ニ短調がきこえてきた。
  私は前夜の残りの鮟鱇を肴に酒を酌みながら、
  モーツァルトと鮟鱇はよく合う、と思った。

この冬、鮟鱇とモーツァルトの相性を試してみるのも良さそうだ。

今日、12月5日は、モーツァルトが亡くなった日。

05-abraham

「モーツァルトが遺したもの/アカデミー賞」

奇妙な笑い方をする、荒唐無稽なモーツァルト。
彼の才能を嫉む宮廷音楽家サリエリ。

この二人の人間模様を描いた映画「アマデウス」は、
第57回アカデミー賞のタイトルを8部門受賞した。

主演男優賞にノミネートされたのは、
モーツァルト役のトム・ハルスと
サリエリ役のフランク・マーリー・エイブラハム。

その栄冠に輝いたのは、
映画の中で、悔しそうな表情ばかり浮かべていた、
エイブラハムのほうだった。

モーツァルトを毒殺した疑いがかけられ、
悪役に仕立てられたサリエリも
このときばかりは、晴れやかな笑顔を見せた。

さてモーツァルト本人は、草葉の陰で何を思うやら。

1791年の今日、12月5日は、
モーツァルトが亡くなった日。

06-dufy

「モーツァルトが遺したもの/ラウル・デュフィ」

20世紀に活躍したフランスの画家、ラウル・デュフィは語る。

   私の眼は醜いものを消し去るようにできている

デュフィは、生涯にわたりモーツァルトを敬い、
彼をモチーフにした十数枚の絵を残している。

色彩豊かに描かれたデュフィの作品は、
美しく、また、奥深い。

モーツァルトの遺産は、パリで静かに眠っている。

今日、12月5日は、モーツァルトが亡くなった日。

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