高田渡 息子
もしも子どもができたとしたら
何をしてあげよう。
フォーク史上最高のシンガーであり、
最高の酔っぱらい、高田渡。
彼は息子に歌を贈った。
「見えるものはみんな人のものだよ
見えないものはぼくらのものだよ」
いま、息子の高田漣は
父と同じくギターを弾いている。
見えなくてかけがえのないものを
たしかに奏でている。
高田渡 反骨
本当の反骨精神とは何だろう。
フォーク史上最高のシンガーであり、
最高の酔っぱらい、高田渡。
反体制をこれみよがしに
カメラの前で叫ぶ人々を横目に
高田は歌った。
「自衛隊に入ろう
自衛隊に入れば この世は天国
男の中の男はみんな
自衛隊に入って 花と散る」
一級の皮肉は
何よりも雄弁だ。
「高田渡 寂しさ」
フォーク史上最高のシンガーであり、
最高の酔っぱらい、高田渡。
寂しがりやの彼は
ツアーに出ても落ち着かず。
吉祥寺に帰ってきては
朝まで仲間とくだを巻く。
そのお酒が彼の体をむしばんで
ついにはどうにもならなくなっても
彼はやっぱり仲間を誘いつづけた。
そんな高田渡の歌は
やさしくて、
やっぱり少し寂しい。
「歩き疲れては 夜空と陸との
隙間にもぐり込んで
草に埋もれては 寝たのです
所かまわず 寝たのです」
「ジャニス・ジョプリン」
ロックの女王、
ジャニス・ジョプリン。
彼女は27年の短い人生にたくさんの恋をした。
しかし本当に愛したのは最後の恋人だけ。
世界を放浪する恋人に何通も手紙を書く。
しかしその手紙はいつも国境ですれちがい
彼が受け取ることはなかった。
雑誌でジャニスの死を知った彼は
レコード屋で彼女の最後の新曲を聴き
さめざめと泣いた。
「Cry baby, cry baby, cry baby,
Honey, welcome back home.」
帰ってきて。
たったそれだけの言葉が
届かなかった。
それが、
女王という称号への代償だとしたら、
世界は悲しすぎる。
「コートニー・ラブ」
ラブという名前を持ちながら、
愛で人を救えなかった女性。
コートニー・ラブ。
夫のカート・コバーンは
カリスマの重圧に耐えきれず
ドラッグに溺れ自ら命を絶った。
コートニーは歌う。
「もしあなたが私と一緒に
この世界を生きてくれるというのなら
あなたのために死んであげる。」
その覚悟は
たしかに本物だったはずなのに。
神様は人間に、
どれほどの愛を要求すればいいんだ。
「ジャニス・イアン」
ジャニス・イアン、
「at seventeen」。
「美人でもなく醜い私は
他の人へのうらやましさで一杯になりながら、
たった1人だけで愛の語らいをつぶやく、
そんな17歳でした。」
自分のすべてが足りなくて
自分のすべてが腹立たしくて。
年を重ね、
たいていのものは
受け入れてしまえるようになった今、
ときどきあの頃に戻ってみたいと思う。