サイモン&ガーファンクル
二人は怒っていた。
自分たちの曲を
プロデューサーが無断で
ロック調にアレンジして
発売してしまったのだ。
一人は大学に戻り、
一人は母国に戻る。
その曲があっという間に
全米ナンバーワン・ヒットに。
サイモン&ガーファンクル、
「サウンド・オブ・サイレンス」。
そういえばいまだに
彼らはライブでこの曲を
アコースティックバージョンで
歌うことの方が多いとか。
その人間臭さもまた魅力。
吉行淳之介
作家、吉行淳之介は、
女性の気持ちがよくわかっている。
女優、宮城まり子の部屋に
初めてやってきたときに
本棚を見てつぶやく。
「僕の持っている本と似ているね」
その一言で、37年間、
彼女は彼から離れられなくなる。
男が女を口説くとき、
大仰な愛の言葉は必要ない。
皆川明
色と線を無限に組み合わせ
一枚の布に物語をつむぐ。
テキスタイルデザイナー、
皆川明はこう言う。
「短期間で魅力がなくなるのは
デザインの力が弱いからだと思うのです。」
そんな彼のブランド「mina」は
必要があれば、
何年前のコレクションの服でも
修繕を引き受ける。
「100年後にも愛される服。」
彼の辞書に、
ファストファッションなんて
文字はない。
ジョー・ストラマー
パンクというものが、
労働者階級の特権だとしたら、
彼はパンクではないかもしれない。
ザ・クラッシュのボーカル、
ジョー・ストラマー。
彼は中産階級の出身だったし、
父親は外交官だった。
ただやみくもな怒りの暴走では
世界は何も変えられない。
音楽にできることは何か。
ライブ中にウイスキーの空ボトルを投げつけられた彼は、
笑ってこう言った。
「こんなことぐらいしかできないのか。」
そして、
降り注ぐウイスキーのボトルにも、
彼は笑って歌うことをやめなかった。
林正之助
吉本興業二代目社長、
林正之助は商いの天才だ。
1959年。
新しい舞台を始める際、
作家の原稿料に悩む
社員を叱りつけた。
「書いたことある人間に
書かせるから高いんや。
うちの社員なら金がいらんやろ。
おまえが書け。」
その舞台はじわじわと評判になり、
50年たった今でも、
大阪の土曜のお茶の間を沸かせる
「吉本新喜劇」となる。
無茶もあるいは
商才のひとつ。
西健一郎
色割烹「京味」の亭主、西健一郎は
初物好きのお客をこう諭す。
「早ければいいってものじゃない。
美味しいものと、
変わったものは違います。」
素材の一番美味しい時期を知って、
料理を作る。すなわち、
「味を迎えに行く。」
脂のよくのったブリ大根、
ぷりぷりのカキと味噌の土手鍋。
さぁ今日は、
どんな冬を迎えに行こう。