石橋涼子 10年03月06日放送
藤山寛美の岡持ち
アホを演じることにかけては天才と言われた
役者、藤山寛美。
彼が舞台裏で片時も手放さなかった道具は
岡持ちだった。
化粧道具からタバコやのど飴まで、
舞台に立つための必需品がすべて詰まっていた。
役者と名乗ることにこだわった彼の言葉がある。
わしは、俳優やあらへん、役者や。
俳優の俳の字は、人に非ずと書くやろ。
芝居には役者の人間性が出るもんや。
そやから、わしは、人間を演じる、役者や。
彼の中には、人のおかしさや愛しさや、悲しさまでも。
人間を演じるための必需品が
ぜんぶ詰まっていたに違いない。
道具のはなし 御木本幸吉の矢立
道具の使い道は、ひとつではない。
うどん屋から始まり、青物、米、海産物を経て
真珠の養殖で財をなした商人、御木本幸吉。
彼は常に「矢立」を腰にさしていた。
ボールペンが普及し始めた時代に、
墨つぼと筆を携帯するための矢立は、
もはや消えゆく道具だ。
彼は、そんな矢立を愛用する理由をこう語った。
「武士の刀」のように、矢立は「商人の魂」だ。
と。
実際は、新聞社などマスコミが
矢立の物珍しさを面白がって紹介することが多く、
御木本の良い宣伝道具になっていたという。
商人は、道具の使い方も、さすがです。
道具のはなし カーライルとフランクリン
イギリスの評論家、
トーマス・カーライルは
人間は、道具を使う動物である
と言った。
ベンジャミン・フランクリンは
人間は、道具をつくる動物である
と言った。
私はどうだろう?
近ごろ、道具を愛でる動物、
になってはいないだろうか。
ケースに入れたままのとっておきのグラスを出して
今夜は一杯、やってみようと思う。