ポアンカレ予想と数学者① パパキリアコプーロス
数学の世界には、
魔物が住んでいる。
数学者、パパキリアコプーロスも
その魔物に人生を翻弄された。
パパは、最初に
ポアンカレ予想を解く。
みな、そう思っていた。
けれど、結局それは叶わなかった。
神経質で、
ひとと関わりを
持つことを嫌い、
結婚もせず、偏屈な変わり者。
墓さえどこにあるか、
わからないという。
パパの死後、
母国ギリシャの作家によって
一編の小説が生まれた。
パパをモデルにした、
ある数学者の、かなしい物語。
ギリシャでは、
ベストセラーになり、
映画化もされたという。
ポアンカレ予想と数学者たち② ストーリングス博士
ポアンカレ予想は、
メルヴィルの『白鯨』に登場する
巨大鯨に似ている。
数学者たちは、
いつの時代も
まさに命がけで
世紀の難問と
対峙してきたのだ。
その難問は
2006年に解決済みだが、
ストーリングス博士は
未だに認めていない。
正しく言うなら、
信じられないのだ。
若かりし頃、博士は、
こんな論文を発表している。
タイトル
「ポアンカレ予想の証明に失敗する人」。
ポアンカレ予想と数学者たち③ ハーケン博士
解けそうで、だけど、
どうしても解けないと
世界の数学者たちを
100年にわたり悩ませつづけた
ポアンカレ予想。
ハーケン博士も
そのひとりだったけれど、
途中から、180度、発想を変えた。
「ポアンカレ予想は、間違っている」。
その証明をしようとしたのだ。
格闘のつづく日々は、
正気を失いそうだったという。
けれど、三度(みたび)。
博士は発想の転換をする。
「こっちの難問なら、
午後を楽しく過ごせて、こんなにはかどる」。
ハーケン博士はそう言って、
別の、世紀の難問
「四色問題」を証明してしまった。
ポアンカレ予想と数学者たち④ サーストン博士
数学者たちは、
特別な世界で生きている。
そこで見つけた証明や定理を、
時に「エレガント」と賞賛する。
どう「エレガント」なのかは
凡人のわたしたちに、難しい。
たぶん聞いても、わからない。
そのくらい、数学は、
特別で特殊な別世界なのだ。
しかしサーストン博士は
数学で得た経験を
わかりやすくわたしたちに
伝えてくれる。
数学の本質は、世界をどういう視点で見るか。
物事を習うことは、物事を見ることです。
ポアンカレ予想と数学者たち⑤ アンリ・ポアンカレ
世界中の名だたる数学者たちが
その魅力にとりつかれ、
挑み続けたポアンカレ予想。
提唱者は、アンリ・ポアンカレ。
ニュートンやダヴィンチとならぶ、
19世紀の、知の巨人。
ポアンカレは、
じつに研究熱心な努力家だった。
ノートを持たない外出先で
思い浮かんだ数式を、
停車中の市電の車体に
書き込んでしまうくらいに。
そうでもなかったら、
世紀の難問は、
そう簡単には生まれない。
偶然は、それを受け入れる準備ができた
精神にのみ訪れる。
ポアンカレ予想と数学者たち⑥ グレゴリ・ペレリマン
むかし、東大の本郷キャンパスにある
三四郎池をなくそうという話があったとき、
猛反対をしたのは、
数学科の教員たちだったという。
数学者というのは、
「思索のための散歩」が好きなようで、
ポアンカレ予想を解いた天才数学者
ペレリマンも、ひどいときは40キロも
歩くことがあったらしい。
歩くことは、考えること。
最近、歩いていますか?