渋谷三紀 10年04月24日放送
100回目の春
百歳にもなればその道が見えてくる。
人生も季節と同じで
過ぎてみてはじめて春夏秋冬があることがわかる。
こんなことをおっしゃっているのは
100歳のおばあちゃん、矢谷千歳さん、
終わらない冬はない。
けれど、春だって
いつまでも止まっていてはくれない。
ひとつひとつの季節を
噛み締め、味わって生きましょう。
与謝野晶子の春
こころが浮き立つのは
春だから。
理由なんて、それだけで十分。
歌人与謝野晶子の春の歌に
こんな一首がある。
清水へ祇園をよぎる桜月夜
こよひ逢ふ人みなうつくしき
月の美しさ、桜の美しさ
そして、夜桜を見に出て来た人まで美しく見えるのは
春だから、自分の心が浮き立っているから
そして、恋をしているから。
このとき、与謝野晶子は
大阪の老舗の和菓子屋の娘で
与謝野鉄幹の弟子のひとりに過ぎなかったけれど
心には消えることのない恋の灯がともっていた。
清水へ祇園をよぎる桜月夜
こよひ逢ふ人みなうつくしき
こころが華やぐのは
恋をしているから
理由なんて、それだけで十分。
京都は結婚前の与謝野鉄幹と晶子が
忍び逢った町でもあった。
スヌーピーの春
世界一有名なビーグル犬、スヌーピー。
チャーリーブラウン少年の家に来るまえ、
別の飼い主に捨てられた過去があることは、
案外知られていない。
よく犬なんてやってられるね。
そんな問いにスヌーピーはこう答える。
配られたカードで勝負するしかないのさ。
それがどういう意味であれ。
現実から目をそらしたり、自分の境遇を嘆いたり、
人間みたいなことはしない。
上を向き続ける。それが人生のコツさ。
そうつぶやく犬小屋の上のスヌーピーみたいに、
空をながめてすごす春の一日も悪くない。
山村暮鳥の春
詩人山村暮鳥作、「風景」。
そこにはただただ同じことばが並ぶ。
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
そこにはただただ同じけしきが広がる。
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
ときにことばは、
どんなハイビジョンより
ほんものの春を映し出す。