2010 年 10 月 17 日 のアーカイブ

薄景子 10年10月17日放送



本のはなし 五味太郎

読むというより、中に入っていっしょに遊ぶ。
そんな絵本を次々生みだす五味太郎。
彼のエッセイが名門私立中学の
国語の試験に出たことがあるという。

作者の意図を次の4つから選びなさい。
全体の論旨を50字以内でまとめなさい。
出題はぜんぶ五味さんの文章がらみだった。

試しにそのテストをやってみたという五味さん。
当然100点かと思いきや、フタをあければ68点。
85点が合格ラインの入試に、
不合格という結果になってしまった。

作者本人だぜ、たのむよ、中学に入れてくれよ。
とこぼしつつ、
この気分を50字以内にまとめてみよう!
と洒落で流すユーモアセンス。

どんなことでも面白がれる、五味さんの器は無限大。

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石橋涼子 10年10月17日放送



本のはなし 森見登美彦

本は、読み終わってからが始まりかもしれない。

芥川龍之介は今昔物語を読んで「藪の中」を書き、
太宰治はギリシャ神話のエピソードから「走れメロス」を書いた。

そんな巨匠たちの作品を愛読しカバーしたのは、森見登美彦。
「新釈走れメロス他四編」という短編小説集は
近代日本文学の名作を現代に置き換えたものだ。

なぜ書いたのかと聞かれると、彼はこう答えた。


 やりたくてしょうがなかったので
 やったとしか言いようがない。

さあ、読書の秋。
今あなたが読んでいる本からは、何が生まれるだろう。



本のはなし 松谷みよこ

児童文学作家の松谷みよこは、
終戦直後の東京でデビューした。

当時は道徳的な読み物だった児童文学で、
彼女は戦争の辛さや社会の厳しさも隠さずに描いた。

松谷は、子どもをひとりの人間と考えている。
切ないことも厳しいことも受け止めるひとりの人間、と。

師匠である坪田譲治の教えは、この一言だったという。


 人生をお書きなさい。



本のはなし 安藤忠雄

専門教育を一度も受けることなく
世界的建築家になった安藤忠雄は、大阪の下町で育った。
働き方も、生き方も、不器用でまっすぐ。

しかし、どんなに素晴らしい建築でも、
クライアントに説明できなければ建てられないし、
職人とケンカしてしまっては、完成しない。

あるとき、下町の小さな会社の社長に言われた。


 キミはおもしろい人間だけど、
 もっと本を読んだ方がいい。

安藤は、その言葉に従うことにした。
収入の半分は本にかける。そう考えて、大量に本を買った。
気になる部分にアンダーラインを引きながら読み
くりかえし読むたびに変わるラインの場所から
自分の思考の変化を分析したという。

今、安藤忠雄はこう語る。


 先人の英知が詰まった本は、誰にも開かれた心の財産。
 それを自ら放棄することは、あまりにも愚かなことだ。




本のはなし 俵万智

25歳で出版した歌集「サラダ記念日」が
ベストセラーになった女流歌人、俵万智。

一児の母になった彼女にとって、こどもの言葉は、
まっさらな目で世界を見る発見にあふれている。

おんぶしてほしいときは、
「せなかでだっこして」とせがみ、

半端な時間にお菓子を食べたいときは
「きもちが3時なの」とねだる。

俵万智は子どもの成長に驚いたり喜んだりしながら
こんな歌を詠んだ。


 たんぽぽの綿毛をふいて見せてやる
 いつかおまえも飛んでゆくから


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熊埜御堂由香 10年10月17日放送



本のはなし スヌーピーの素顔

世界中で大人気のキャラクター、スヌーピー。

もともとはアメリカの人気漫画家
チャールズ・M・シュルツが
新聞に連載していた「ピーナッツ」という漫画の登場人物だ。

漫画の中で描かれるスヌーピーは
犬小屋の屋根の上で空想にふけり、多くの名言を残している。
例えば、こんな人生訓。


 羊として12年生きるより、
 ライオンとして1日生きるほうがましさ。

犬だって哲学するときがある。



本のはなし 魔女の宅急便

ジブリ映画で知られる「魔女の宅急便」。
原作は角野栄子(かどのえいこ)が書いた児童文学だ。
1985年に1巻が発売。
主人公の魔女のキキは13歳で修行にでかける。
人々に世の中には不思議なことがたくさんあるのだと、
自分の魔法で教えるという役目をせおって。

角野は、キキに「ほうきで飛ぶ」という魔法をひとつだけ授けた。
キキは、ひとを驚かせたり、怖がらせたりする魔法ではなく
ほうき1本で世界の不思議を街のみんなと共有したのだ。

その後も、キキたちの物語は紡がれ続け、昨年6巻でついに完結した。
キキは、34歳。初恋のとんぼさんと結婚して
2人の子どもがいる。
少女のころに降り立った街で、
ずっとずっと暮らしてきた。

角野は言った、
魔法はたったひとつでいい。そしてそれは、
魔女でなくたってきっと誰もが必ず
ひとつは持っているものなのだと思って
書き続けてきました。

そう、魔女のキキの物語は、
わたしたちの物語でもある。



本のはなし 装丁家・鈴木成一

装丁家・鈴木成一(すずきせいいち)。
約8000冊を手掛けた彼の方法論は明確だ。

原稿を読み込み、個性をかたちにすること。

装丁は、本の第一印象。
見かけに惚れてはじまる恋があってもいい。
気になる表紙の1冊を手にとってみよう。

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