熊埜御堂由香 10年11月21日放送



あの人の暮らし 佐野洋子とシズコ

絵本「100万回生きたねこ」で
知られる作家、佐野洋子は、
母親、シズコとの親子関係に悩み続けた。
高校の担任に、母は長女との関係をこう言った。


 女同士ということで嫉妬、かもしれません。

洋子は自分にどこか近い父にだけ、なついた。
終戦後、シズコは未亡人になるが、
めそめそせず、いつもばっちり化粧していた。
そんな母を、下品だ、と洋子は思っていた。

シズコが80歳近くになる頃、洋子と二人で暮らし始める。
シズコには痴呆の症状がではじめていた。
自身も60代にさしかかり、苦しかった。洋子は、
結局、母を施設に預ける決意をする。

子どもの頃は、手をつなぐことさえ、嫌悪し合ったのに。
洋子は、施設でシズコの体をさすり、
1つの布団へ一緒に入り話をした。
それは母と娘の暮らしの、最後の形だった。

シズコさんは、洋子さんに、無邪気に言った。


 私とあなたの間には、いることも、いらないこともあったわねぇ。




あの人の暮らし 佐野洋子

作家、佐野洋子。
今月5日、72歳で、静かに息をひきとった。

彼女は言った。


 余命2年と云われたら
 人生が急に充実して来た。
 毎日が楽しくて仕方ない。

余命2年をゆうに超えて、
洋子さんは、暮らした。生きた。

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