中村直史 11年01月09日放送
人気作家、赤川次郎は
二十歳のころ、自分の時間を守るのに必死だった。
実家の家族を支えるために、
高校を出てすぐに勤めに出たけれど、
小説を書く時間まで奪われたくない。
飲み会をはじめとする
会社の行事を断るのは
今よりずっとタブー視された時代だった。
つきあいが悪いと幹事やらされるんですよ。
その時だけやって、次からまた行かないんです。
自分を守り抜いた先には、500にも及ぶ作品と
新作を心待ちにするたくさんの読者が生まれた。
それは、宇宙戦艦ヤマトが
宇宙へと飛び立つずっと前のこと。
九州から700円を握りしめ上京してきた若き漫画家、松本零士は、
二十歳のころ、貧乏アパートの一室で
自分の個性を探していた。
個性は、ふつう、自分の中にあるもの。
けれど松本さんの場合、
彼の下宿に集まるゆかいな仲間たちが運んできてくれた。
喧嘩っぱやいやつ、
寡黙なやつ、
一年お風呂に入らないやつ、
いろんな仲間がいたけれど
わかったのは、「結局みんな同じ」ということ。
さまざまな個性の奥にある「同じもの」の発見が、自分の個性になると思った。
友人がいっぱいいたから、友人抜きの自分って存在しないんです。
だから松本さんの漫画には、みんなで旅をする話が多い。
ヤマトの乗組員たちも
得意、不得意を補いながら旅をしている。
明日、大人の社会へと旅立つみなさんも、
ぜひ、素敵な旅を。