熊埜御堂由香 11年02月20日放送
谷川俊太郎の詩に
画家・佐野洋子が絵をつけた詩集「女に」。
その詩集はふたりが結婚した翌年に出版された。
その中の一節、
もう何も欲しいとは思わないのに
まだあなたが欲しい。
詩とはパーソナルな芸術だ。
この美しい詩集はそう教えてくれる。
詩人、小池昌代(こいけまさよ)の代表詩集。
ババ、バサラ、サラバ
20篇ほどの詩がおさめられているが、
最後までその言葉の意味は明かされない。
読者すべてが抱くであろう
ババ、バサラ、サラバって何?という
問いの答えだろうか。
小池はこう言う。
現代詩を書いていると唇が寒くなる。
濁った音はあたたかい。
唇の破裂と爆発を、そこに生じる摩擦熱を
寒いわたしは求めていた。
ババ、バサラ、サラバ。
口だしてみると、不思議な呪文のように
ちょっと切ない、じわっと心が熱をもつ。
そんな感覚になるのはなぜだろう。
「意味」を伝えることを超えて
詩人、小池昌代は言葉と格闘する。