2011 年 4 月 3 日 のアーカイブ
蛭田瑞穂 11年4月3日放送
俳優マーロン・ブランド。
1953年、29歳で出演した映画『乱暴者』で
暴走族のリーダーを演じ、
一躍若者たちのカリスマ的存在となる。
その不良的な演技はジェームズ・ディーンにも
大きな影響を与えたという。
その後、『波止場』『ゴッドファーザー』で
2度のアカデミー主演男優賞を受賞し、
戦後のハリウッドを代表する俳優となった
マーロン・ブランド。
彼は1924年の今日、
ネブラスカ州オハマに生まれた。
フランシス・コッポラの代表作『ゴッドファーザー』。
1972年にアメリカで公開されると、
当時の興行収入記録を塗り替える大ヒットになった。
人気を受けて、74年に続編『ゴッドファーザー・パートII』が公開。
この映画も大ヒットし、前作に引き続き
アカデミー作品賞を受賞した。
アカデミー賞の長い歴史の中で、
1作目と2作目が続けて作品賞を受賞した例は
『ゴッドファーザー』をおいて他にはない。
『ゴッドファーザー』。
それはフランシス・コッポラが
映画史に立てた不滅の金字塔である。
映画『ゴッドファーザー』の原作者マリオ・プーゾは
主人公のドン・コルレオーネを
ぜひマーロン・ブランドに演じてほしいと思っていた。
プーゾは意を決し、その思いを手紙にする。
「あつかましいことは承知しておりますが、
あなたはこの役を演じられる唯一の俳優だと思います」
プーゾの手紙に心を動かされたブランドは
自分がイメージするドン・コルレオーネをビデオで撮影し、
監督のフランシス・コッポラに送った。
そのビデオの中で彼は口に綿を詰めて頬を膨らませ、
貫禄のあるマフィアのドンという役づくりをした。
当初、別の俳優を主役に考えていたコッポラだったが、
このビデオを見てマーロン・ブランドの起用を決めた。
男たちの思いがつながって生まれた『ゴッドファーザー』。
映画はアカデミー作品賞に輝き、
マーロン・ブランドは主演男優賞に選ばれた。
1972年、マーロン・ブランドは
『ゴッドファーザー』で演じた
ビトー・コルレオーネ役で、
アカデミー主演男優賞を受賞する。
1974年、ロバート・デ・ニーロは
『ゴッドファーザー・パートII』で演じた
ビトー・コルレオーネ役で、
アカデミー助演男優賞を受賞する。
これは、ふたりの俳優が同じ人物を演じ、
それぞれがアカデミー賞を受賞した唯一の例。
マフィアのドンと、ドンにのしあがる青年。
マーロン・ブランドとロバート・デ・ニーロは、
それぞれの役を見事に演じきった。
セリフを覚えてこない。
すぐに女優に手を出す。
撮影スタッフに怒鳴り散らす。
そんな撮影現場での態度から
トラブルメーカーの悪評もあるマーロン・ブランド。
だが一方で彼には、生涯に渡って人種差別と闘う
人道主義者としての側面もある。
マーティン・ルーサー・キングが導いた歴史的なデモ
「ワシントン行進」に参加し、
人種差別撤廃を訴えたこともある。
『ゴッドファーザー』でアカデミー主演男優賞に選ばれた際には、
ハリウッド映画におけるネイティブアメリカンの
差別的な描かれ方に異議を唱え、受賞を拒否した。
あらゆる面で型破りな俳優、マーロン・ブランド。
こんな男はもう2度とあらわれない。
フェデリコ・フェリーニの『甘い生活』。
ルネ・クレマンの『太陽がいっぱい』。
フランコ・ゼフィレッリの『ロミオとジュリエット』。
数々の映画音楽を手がけ、
その哀愁に満ちた旋律で映画ファンを魅了した
イタリア人作曲家ニーノ・ロータ。
フランシス・コッポラに請われ、
『ゴッドファーザー』全3作の音楽も担当した。
主題曲『愛のテーマ』は、
映画音楽の代名詞ともいえる名曲。
ニーノ・ロータ。
その名は永遠に映画史に刻まれる。
2005年、ニューヨークの
クリスティーズで行われたオークションで、
マーロン・ブランドが所有していた
『ゴッドファーザー』の台本が31万2千800ドルで落札された。
日本円にして約3000万円。
それは映画の台本につけられた史上最高の額。
俳優マーロン・ブランドと映画『ゴッドファーザー』。
その人気は不滅である。
映画『ゴッドファーザー』3部作の主人公、
マイケル・コルレオーネ。
マフィアのドン、ビトー・コルレオーネの
三男として生まれた彼は、
無口でインテリ風の青年であったが、
ファミリーを守るために激しい抗争をくぐり抜け、
やがてドンにのしあがる。
映画でこの役を演じたのはアル・パチーノ。
当時、彼はまだ無名の役者だった。
映画会社は起用に反対したが、
監督フランシス・コッポラは譲らず彼を抜擢する。
アル・パチーノのその後の活躍は誰もが知るところ。
『ゴッドファーザー』の成功により、
俳優アル・パチーノもまた、
映画界の頂点にのしあがったのである。