三島邦彦 11年7月17日放送
ヨーロッパの芸術家/ カズオ・イシグロ
長崎で生まれたひとりの男の子が、
4歳の時、両親に連れられイギリスへと渡った。
男の子の名前は、カズオ・イシグロ。
約30年後、3作目の小説『日の名残り』が、
イギリス最高の文学賞、ブッカー賞を受賞し、
現代イギリス文学を代表する作家のひとりになった。
日本を舞台にした作品と、ヨーロッパを舞台にした作品。
その両方で、ヨーロッパや日本という地域性を超えて人間の奥深くを見つめる、
イシグロ独自の世界を展開する。
彼の作品を彼の作品たらしめるもの。
それを彼は、「声」だと言う。
「声」について、彼はこう語る。
本物の作家になるというのは、
本を出すかどうかなんてことではかならずしもなく、
一定の技巧を身につけるということでもない。
自分の声を見つけた時点で、人は本物の作家になるのです。
ヨーロッパの芸術家/モーツァルト
最も天才という言葉がふさわしい音楽家、モーツァルト。
自分の息子が天才だと気付いた父親は、
ウィーン、パリ、ロンドン、そしてイタリアへ、
息子を連れて何度も演奏旅行に出かけた。
6歳の時にはウィーンで7歳のマリー・アントワネットに出会い、
7歳の時にはフランクフルトでゲーテにその才能を認められる。
ヨーロッパの全てが、彼の才能を祝福し、彼を音楽家として成長させた。
音楽家にとっての旅の重要性について、彼はこう語る。
旅をしない音楽家は不幸です。
才能がある人も、一か所にとどまっているとダメになってしまいます。