渋谷三紀 11年9月18日放送
ある脚本家の美学/向田邦子
脚本家、向田邦子の家では、
遠足の弁当には海苔巻き、と決まっていた。
朝になり、母が海苔巻きを切り分け始めると、
邦子は途端に落ち着きをなくす。
海苔巻きの切れ端が、大好物だったのだ。
かまぼこも、伊達巻も、羊羹も、
邦子はとにかく、切れ端が好き。
切れ端好きの理由を、
彼女はこんな言葉で語っている。
なんだか貧乏たらしくて
しんみりして、うしろめたくていい。
不ぞろいで、不恰好で、いとおしい。
切れ端も、にんげんも、
邦子の目には、そう映っていたのかもしれない。
あるキャラクターの美学/キティちゃん
右耳に赤いリボンの白いネコ。
日本を代表する人気キャラクター、
キティちゃん。
電車で、会社で、学校で、
毎日どこかしらで、
私たちはキティちゃんに出会う。
さらに旅先の土産物屋には、
マリモキティになまはげキティにシーサーキティと、
想像をこえたさまざまな全国ご当地キティ。
世界的に有名な宝石ブランドからは、
100万円以上もする高級クリスタルキティ。
お菓子メーカーの広告では、人間になったキティ。
活躍はとどまることを知らない。
しかし、どんな風に姿を変えても
キティはキティとわかるのが、強いキャラクターの証。
ブレない自分があれば、
どんな変化にも「ハロー」と言えるのかなあ、
キティちゃん。