茂木彩海 11年12月18日放送
chez_sugi
男の美学 夏目漱石
文豪・夏目漱石の代表作、「吾輩は猫である」。
猫の飼い主である珍野苦沙弥の家を訪れた美学者の迷亭が、
くるくる丸めて懐にしまえる不思議な帽子を自慢してみせる場面がある。
その帽子、パナマ帽。
作品に登場させるだけでは事足りないほど、
漱石はこの帽子を愛していた。
あるとき、「吾輩は猫である」の原稿料が入った漱石は
すぐに街の帽子屋へ行き、原稿料をそっくりそのまま使って
パナマ帽を買い、家の中で得意気にかぶっていた。
そこに訪ねてきた旧友がいた。
旧友は自分よりだいぶ上等なパナマを被っていた。
それを見た漱石は
「教師のかたわら1枚50銭の「猫」を書いているんだから
しかたないじゃないか」、と彼につっかかる。
パナマ帽で機嫌を損ねる漱石はまるで子供のようだ。
けれど、漱石はこんなこともいう。
愛嬌と云うのはね、
自分より強いものを倒す柔かい武器だよ。
Dr. Jaus
男の美学 土屋賢二
笑う哲学者、土屋賢二。
趣味はジャズピアノ。
40歳で初めてピアノに触れ、独学でレパートリーを増やした。
演奏する曲は『ラカンの鏡』『オッカムの髭』など。
哲学者としての美学を忘れない。
彼は言う。
ピアノの下手な弾き方など存在しない。
なぜかというと、
ほうっておいてもひとりでに実現してしまうことだからである。
鍵盤の上でも、彼はしっかり哲学をする。