薄景子 11年12月18日放送
男の美学 アルド・チッコリーニ
86歳のピアニスト、アルド・チッコリーニ。
多くのピアニストが
体を揺らしながら弾く大曲を、
チッコリーニは、背を少し曲げ、
楽器とひとつになったかのように静かな表情で弾く。
作曲家を自身の神として、宗教にも属さない。
彼の演奏には、美学がある。
自分の存在を消して、聴衆には
作曲家の表現に集中してもらいたい。
そのなめらかな音色には、
一点のくもりも、エゴもない。
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男の美学 大森一樹
映画監督、大森一樹。
映画の道を思いながら医大にすすんだのは、
漫画家であり医学博士でもあった
手塚治虫への憧れから。
のちに大森は、自らの体験をもとに
医学生を描いた映画「ヒポクラテスたち」を製作。
小児科の教授役を手塚に依頼した。
医者はかぶらないからと
手塚にベレー帽を脱いでもらったとき、
「僕からベレー帽をとったのは、大森くんだけだ」
と憧れの人は笑った。
大森は確認する。
手塚さんは、この年齢で何を描いていたのだろう。
「生命とはなにか」をテーマに据え
ヒューマニズムをモットーとして漫画を描きつづけた手塚治虫。
その手塚に近づきたいと願うことが
大森一樹の美学だったのだろう。