宮田知明 12年3月25日放送


Strifu
忘れられない日/北野武

「まあまあじゃん」

映画・戦場のメリークリスマスの試写を終え、
お笑い芸人にしては、
それなりの演技をしたな、と思った、
北野武。

こっそり、映画館に観に行くと、
シリアスなシーンにもかかわらず
彼が出たとき、観客が急に笑ったのを見た。

「これ、どうにかしないと、映画なんてやってられない」

それ以降、彼は出演映画に、
俳優としてのこだわりを持つようになる。

北野武の俳優としての生き方を決めたのは、
そんな、なんでもないはずの一日。



忘れられない日/大山のぶ代

「先生、あのー、私、
 あれでいいんでしょうか?」

それは、藤子不二雄と大山のぶ代の初対面の日。
アニメ、ドラえもんの録音現場で、
出演者と藤子不二雄が挨拶をする時のことだった。

彼の持つ優しい雰囲気にほだされ、
とっさにでた一言であり、
そして、いちばん、気になっていたこと。

藤子は、一度彼女を見て、
そしてスクリーンのドラえもんに目を移し、
こう言った。

「ドラえもんって、ああいう声だったんですねえ。」

それは、大山の、
ドラえもんの声への迷いや、不安が消えた、大切な日。


じぇにゅ
忘れられない日/鈴木健

2007年10月4日、ヤクルトvs横浜。

それはヤクルトスワローズ、
鈴木健の引退試合。

8回裏、宮本の代打として
バッターボックスに立った鈴木の打席は、
リーグ優勝も決まった後の消化試合とは思えない
大きな盛り上がりを見せた。

粘りに粘り、ファールの山を築く鈴木。
1球1球にどよめく球場。
13球目、打球は、サードへの平凡なファールフライ。
しかしサード・村田は、追いつくも、ワザととらない。
スタジアムに、大きな拍手が沸き起こる。

そして15球目、センター前ヒット。
1塁ベース上で、涙する鈴木。

結果だけみれば、単なるシングルヒット。
でも、この1つの打席に、
苦労を積み、ひたむきに野球をやってきた鈴木への、
選手たちの想いがこもっていた。

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