B.B
植物のはなし カレル・チャペック
4月に生まれた私の母は、50歳の誕生日を迎えたその日に、
突然ガーデニングに目覚めた。
真っ白な植木鉢に
真っ黒な腐葉土。
そこにお気に入りのピンクの花の苗を
大事そうに植えるその姿を見て、
ああ、そろそろ春だな、と娘は思う。
趣味が園芸だった劇作家、カレル・チャペックに言わせると、
「4月はこれこそ本格的な、恵まれた園芸家の月」であり、
「とにかく、自身でふかふかした土を指でほじくってみるといい」らしい。
母はきっと、その魅力を知ってしまったのだろう。
jiroh
植物のはなし 塚本こなみ
はじめて診察したのは、700歳の松の木だった。
日本ではじめて、木のお医者さんになった女性。塚本こなみ。
造園家の夫を支えるかたわらで、
男性が多い現場を不思議に思い、
女性の目で植物と向き合うべく15日間の長い試験の末に、
樹木医となった。
そんな塚本は、
「人間が植物を守ろうとか、おこがましいことを言わないでほしい」
と、語る。
自然を守ろう。その言葉が使われれば使われるほど、
私たちは木に守られている、という事実が薄れていく。
もの言わぬ樹木が相手だからこそ、その無言の声を受け止める。
その言葉のない会話こそが、樹木医の原点なのかもしれない。