小野麻利江 12年5月20日放送
Jude Doyland
植物のはなし 狐野扶実子 春のニンジンのスープ
切れない包丁で皮をむしりとったように切っては、
ニンジンが、かわいそう。
出張料理人として世界の要人たちをうならせ、
<フォション>のエグゼクティブシェフを
つとめたこともある料理人・狐野扶実子。
人間にとって心地のいい料理をつくるためには、
食材も心地よくいられるよう
やさしく扱わなくてはいけない。
それが彼女の、料理のやり方。
少しだけミルクの香りがする、春の赤ちゃんニンジン。
その皮をそっとむいて、
玉ねぎの薄切りといっしょに、大切に大切に、火を通す。
沸騰させると味が抜けてしまうから、
その直前くらいの、火加減で。
ニンジンがやわらかくなったら、
バターを加えて、煮汁ごとミキサーへ。
仕上げとしてスープの上に、
バニラの香りをうつしたオリーブオイルを、たらり。
彼女がつくる春のニンジンのスープは、
食べる人間と、食べられるニンジンのことが
同じくらい大切に、想われている。
うちのポチ
植物のはなし 高橋順子 よもぎの葉をつむ時間
よもぎの葉の裏は白い
詩人の高橋順子は子どものころ、
よもぎの葉をつみにいくたびに
くりかえしくりかえし、祖母にそう言われた。
よもぎの葉の裏は白い
そう教えてくれた祖母も、今はもう亡く。
子どもの時間が二度とこないことを
高橋は、ひとりの野原で感じとり、こううたう。
もう間違えることができない
よもぎの葉は白い裏