2012 年 7 月 1 日 のアーカイブ

佐藤延夫 12年7月1日放送


Bob Embleton
バージニア・リー・バートン1

  むかしむかし、ずっと
  いなかの しずかなところに
  ちいさいおうちが ありました。

こんな書き出しで始まる絵本をご存知ですか。
アメリカの絵本作家、バージニア・リー・バートン作、
「ちいさいおうち」。

鮮やかな青色の表紙の真ん中には、
人の顔をしたような、小さなおうち。
そしてタイトルの周りに咲くひなぎくは、
バートンの大好きな花でした。

ひなぎくは、平和な日々の象徴として、
絵本の中にも登場しています。


garden beth
バージニア・リー・バートン2

バージニア・リー・バートンの絵本、
「ちいさいおうち」を読み進めると、
あることに気付きます。

それは、古き良きものが
社会の発展や文明によって
いとも簡単に汚されていく、ということ。

だからバートンは、物語の終わりを、こんな言葉で締めくくっています。

  ちいさいおうちは、もう二度と町へ行きたいとは思わないでしょう・・・
  もう二度と、町に住みたいなどと思うことはないでしょう・・・

それは、海辺の村の質素な暮らしに幸せを見つけた
バートンの生き方、そのものだったのです。


kelseywhytock
バージニア・リー・バートン3

アメリカの絵本作家、
バージニア・リー・バートンは
マサチューセッツ州で生まれました。

お父さんのアルフレッドは冒険家で、
お母さんのリーナは、イギリスの詩人でした。
何度も名前を変えるような不思議な人だったようです。

バートンの幼少期は、幸せに満ちていました。
お祝いの日はみんなで着飾って歌い踊り、
両親は友達を集めて人形劇もしてくれたそうです。
彼女はそのときの思い出を忘れませんでした。

「父は、お誕生日やクリスマスには、
 美しい挿絵のついた子どもの本をくれて、
 声に出して呼んでくれました。
 私の絵本への興味は、きっとこのことが出発点だったのでしょう」

幼いころの思い出は、大切に。
だって、幸せな人生をつくってくれるのですから。


danielel
バージニア・リー・バートン4

バージニア・リー・バートンが、
絵本作家になる前の話。

長男のために初めて書いた絵本は、
ホコリを主人公にしたお話でした。
13もの出版社にボツにされ、
長男アリスに読み聞かせても、
話の途中で眠り込んでしまったそうです。
そしてバートンはこう考えます。

「もしも彼らがもじもじし始めたら、潔く書き直すこと。
 最後まで集中して聞いたら、
 きっとほかの子どもたちも好きになるに違いない」

正直な子どもの感性に気づかされることは多い。



バージニア・リー・バートン5

アメリカの絵本作家、
バージニア・リー・バートンを知る人は、
みんな口を揃えて、こう言います。

「彼女は、いつも生きる喜びを体中にみなぎらせていた」

その絵を見ればわかるように、
彼女の描く主人公は、本の中から飛び出してきそうなほど
躍動感に溢れています。

バートンは、アトリエにフランクリンストーブと
お気に入りのレコードコレクションを持ち込み、
仕事に没頭すると「ノックしないで」と張り紙をして
部屋の中に閉じこもったそうです。

彼女が亡くなったあと、スケッチブックの片隅から、
こんなメモが見つかりました。

「よい本を作ること。
 そうでなければ全然やらないほうがまし」

仕事に対するまっすぐな気持ちも、
彼女の体に、みなぎっていたようです。


Mike Pennington
バージニア・リー・バートン6

アメリカの絵本作家、
バージニア・リー・バートン。
彼女の住んでいた家は、
フォリーコーブという入り江の村にありました。

もともとは車道に面していた家を
果樹園の中に移築して、
あたり一面には、大好きなひなぎくを植えたそうです。

その10年後に生まれた絵本が、
今でも世界中で読まれています。

「ちいさいおうち」
彼女の体験から生まれた物語は、
全米絵本の最優秀賞、コルデコット賞を受賞しました。


muffinn
バージニア・リー・バートン7

アメリカの絵本作家、
バージニア・リー・バートンは、
休むことを知らない人でした。

朝は4時半に起きてコーヒーで目を覚まし、
アトリエにこもります。
そして料理や瓶詰めを作り、鶏や豚の世話、
さらに子どもたちにはピアノのレッスン。
近所の主婦を集めて、デザインクラスまで開きました。

バートンを知る人は言います。

「彼女は、その日そのときに子どもがハッピーであるように。
 自分も夫もハッピーであるようにと、ただそれだけだったのよ」

みんなの幸せが、わたしの幸せ。


reegmo
バージニア・リー・バートン8

アメリカの絵本作家、
バージニア・リー・バートン。

彼女の絵本は、
いつも誰かのために書かれたものでした。

「いたずらきかんしゃ・ちゅうちゅう」は、長男アリスのために。
そして二作目の「マイク・ミュリガンのスチームシャベル」は、
次男マイケルのために書きました。
そして、日本でも大ヒットした「ちいさいおうち」。
その原書には、ひなぎくの絵のそばに、こんな言葉が記してあったそうです。

「ドージーに捧ぐ」

ドージーとは、愛する夫、ジョージのニックネームでした。

彼女の絵本が世界中で愛される理由。
それは、ページを開くたびに感じる優しさなのかもしれません。

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