厚焼玉子 12年9月16日放送
夢二の手紙 5
竹久夢二の手紙
嘆くようにぼそぼそ降ってきた雨が
いまはもうこらえきれないで、
大きな涙を流して泣き叫ぶように降ってきた。
寂しい寂しい、心のやりばがない。
じっとこらえていると涙がこぼれそうでならない。
泣けばなぐさむ心なら、泣きたいと思えど
ただもうもだもだと泣くに泣かれぬ。
たったひとりの夜は更けてゆくけれど
戸をたたくものは雨の音ばかり。
なんにも聞かいでも、なんにも言わいでも
ひと目顔が見たい、逢いたい。
いつの手紙かわからない。
誰に宛てたのかもわからない、竹久夢二の手紙。
思い通りにならない恋の相手は誰だったのか。
凜とした強い瞳の持ち主か、世間を恐れる気弱な少女か。
夢二の描いた女の絵をもう一度眺めてみたくなる。