古居利康 12年9月23日放送
次男がつくった日本 ⑤福沢諭吉
福沢諭吉は、次男だった。
下級武士の家に生まれ、思うがままに
他国へ旅立ち、信ずるところに従って
学問に励んだ、という点で、
その経歴は吉田松陰や坂本龍馬に極めて近しい。
いささか異なるのは、
1860年の時点ですでに、この若者が米国を
旅していた、ということだ。
日米修好通商条約の批准のために、
幕府が米国に使節を派遣することになった。
オランダに発注してつくらせた咸臨丸という
蒸気船に、96名の使節団が乗り込んだ。
その中に、中津藩士の諭吉がなぜかいた。
艦長・木村摂津守の従者として、渡航を許されたのだ。
さかのぼること6年前、
闇にまぎれて小舟で外国船に近づき、
強引に乗船を迫って逮捕された
吉田松陰にくらべて、なんと恵まれた境遇。
福沢諭吉、25歳、渡米。
アメリカの初代大統領ワシントンの
子孫の所在を誰も知らない、ということに
衝撃を受ける。それがデモクラシーというものか、と。
選挙。法律。株式会社。
アメリカ社会のしくみをつぶさに見聞した
諭吉は、日本という国がいかに立ち後れているか、
痛感せざるをえなかった。