名雪祐平 12年9月30日放送



パラリンピックの父、子 伊藤智也選手

34歳の時、突然、原因不明の病に襲われた。
多発性硬化症。
1万人に1人という難病。

医師から「余命3年」と宣告された。
これから、体の自由が効かなくなる。

注文した車椅子を間違えてしまい、
ある日届いたのは、競技用の車椅子。

まったくの偶然だった。
いや、運命だったのか。

リハビリのつもりが、競技に目覚め、
どんどん夢中になっていった。

ロンドンパラリンピック。
陸上男子で伊藤智也選手は
3個の銀メダルを見事獲得した。

400mレース後には
明るく素直な言葉が弾んだ。

 最高やね!最高にストレートにうれしいね! 
 男、伊藤智也は絶好調です。

最後の200mレース後には、こう言った。

 悔しさはないね。もうほんと精いっぱい走ったし、
 僕は僕なりのオンリーワンなパラリンピックだった。

それは現役を締めくくる、
引退の弁でもあった。

3年の命、といわれた日から15年。
全力で走りきった、最高の49歳。

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