古居利康 12年10月14日放送
もうひとりのわたし 平井太郎の場合
平井太郎は、20代のほぼ10年間、
いろんな職場を転々とした。
印刷工。図書館の貸し出し係。
英語の家庭教師。タイプライター販売員。
新聞記者。化粧品会社の宣伝部。
映画の弁士までやった。
しかし、彼には志があった。
探偵小説という志が。
『二銭銅貨』という短編で
デビューしたとき、平井太郎は、
「江戸川乱歩」になった。
探偵小説の祖、エドガー・アラン・ポーの
名をいただいた。「おれは日本のポーになる」、
という強い意志がそこにあった。