葱
小川三夫「不器用な言葉」7
堂や塔は幾重にも材を組んで積み上げて行く。
ひとつひとつの材の寸法のわずかな違いが、
積み重ねれば大きな違いになってしまう。
けれども、いまの法隆寺の五重塔や薬師寺の東塔は、
1個1個の木材はみんな不揃いだ。
木の癖に沿って割ってつくっているから、みんなばらばらだ。
ばらばらなんだけど、大事なところでは
水平や垂直が通ってなければならない。
不揃いの部材で組んだ法隆寺の五重塔は
1300年も建っているんだ。
1本1本支え合って総持ちで立っているんだからな。
宮大工・小川三夫は弟子も、
大勢育てるときは不揃いがいいと言う。
腕も、考えも同じくらいというのが集まっても
ろくなことはない。
不揃いでなくちゃあかんのや。
いいのもいる、悪いのもいるっていうのがいいんだ。
総持ち、いい言葉だな。みんなで持つ。
不揃いこそ、社会のかたちとしては安定感があるし、 強い。
不揃いを扱うと言うのは時間がかかるし、余裕がないとできない、とも言う。
人を育てるのに急いだらあかんでぇ、と。