大友美有紀 12年11月17日放送
Kike’s
パウル・クレー「食卓の言葉」
チュニジア
無名時代もクレーは、線画を描き続け出版社に売り込んでいた。
やがて、カンディンスキーと出会い
彼の主催する「青騎士」グループに参加する。
画家としての可能性が見えてきた34歳の時、
2人の友人とチュニジアに旅をする。
それまでモノクロームの絵を描いていたクレーが
色彩を手に入れたとされる旅だ。
色彩は私を永遠に捉えた。
私にはそれがわかる。
この至福のときが意味するのは、
私と色彩がひとつだということ。
私が、画家だということ。
クレーはチュニジアで色彩に目覚めた。それはほんとうだろう。
けれど、この有名な言葉は、今では後年、日記に書き加えられたとされている。
クレーには、この旅でもう一つの出会いがあった。
それは、帰りの船のディナーだ。
この夕食については本が一冊書けそうだ。
スパゲティがとてもおいしかったので、
ついしっかりと食べてしまった。
モミの葉で香りをつけた猪に果物の煮込みが出たあたりから、
胃が重くなってきた。それでも勝負を続けた。
日記にはまだまだ料理の描写が続いていく。
当時のままの、クレーの感動がそこにある。