名雪祐平 13年1月27日放送
大島渚がいた 5
愛する男、吉蔵の首を腰紐で絞め、
性器を切り取った女、阿部定。
この阿部定事件をモチーフに、
大島渚は傑作『愛のコリーダ』を
完成させた。
男と女のエロスが極限となり、死にいたる。
その本質をどう描くか。
大島は日本初のハードコア・ポルノの表現をとった。
美しい映像と人間の精神世界が見事に描写され、
国際的な高い評価を得たが、
日本では膨大な修正を経て、1976年に公開。
目をつけた警視庁は、
映画の脚本と写真が掲載された単行本を押収。
東京地検はわいせつ文書として大島を起訴した。
大島は、裁判でこう喝破した。
「わいせつ、なぜ悪い」と問いたい。
わいせつは検察官の心の中にだけしかない。
そして、無罪判決を受け、言った。
有罪のほうがよかった。
憲法判断を避けた肩すかし判決だ。
映画『愛のコリーダ』が
ほぼ完全ノーカット版で日本で公開されたのは
2000年のこと。
大島の思想に遅れること、24年。やっと。