2013 年 2 月 のアーカイブ

三國菜恵 13年2月23日放送


chao
登場人物たち 森進一『襟裳岬』

森進一の代表曲『襟裳岬』。

この曲の、名もなき主人公の心情に、
当時25歳の森は、自分の姿を重ね、はげまされていたという。
それは、この一節。

日々の暮らしはいやでも
やってくるけど
静かに笑ってしまおう

つらい時期をむかえていた森にとって、
襟裳岬の主人公はまさに自分だった。

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三國菜恵 13年2月23日放送



登場人物たち 王様とこども(谷川俊太郎『黒い王様』)

谷川俊太郎作『黒い王様』。
そこには境遇の異なる2人の人物が登場する。

ひとりは、裕福な王様。
もうひとりは、貧しいこども。

谷川は、彼らの異なるかなしみを
こんなふうに描いてみせた。

おなかをすかせたこどもは
おなかがすいているのでかなしかった
おなかがいっぱいのおうさまは
おなかがいっぱいなのでかなしかった

 ふたりともめになみだをうかべて
 おなじひとつのほしのうえで

かなしみの理由は人それぞれで、
何が不幸かなんて、くらべられないのだろう。

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三島邦彦 13年2月23日放送


Susan NYC
登場人物たち 断食芸人(カフカ『断食芸人』)

カフカの名作、『断食芸人』の主人公は、
その名の通り断食をすることを生業にしている。
檻の中で、断食何日目という札をかかげて、
ただひたすらに時間の経過を待つ日々。

飲み食いをせずに生きる。
そのシンプルなエンターテイメントに、人々は驚く。
時間が経つほどに、誰かが陰で食事を与えているのではと疑う人が増える。
議論が高まるほど注目は集まり、見に来るお客の数が増える。

しかし、人は飽きる。残酷なほど突然に。
そしてみんなに飽きられ、忘れられた後も、断食芸人は食事をしなかった。

ある日、サーカスの団員が、檻の中にいる断食芸人を発見した。
彼はまだ生きていた。何も食べず、何も飲まずに。
発見した男は、なぜ断食をし続けるのかを聞いた。
断食芸人はこう答えた。

美味いと思う食べ物が見つからなかったからなんだ。
見つかってさえいればな、世間の注目なんぞ浴びることなく、
あんたやみんなみたいに、腹いっぱい食べて暮らしていただと思うけどね

みんなに飽きられて死んだ男、断食芸人。
彼もまた、世界に飽きていたのかもしれない。

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三島邦彦 13年2月23日放送



登場人物たち ウィリアム(ティム・オブライエン『ニュークリア・エイジ』)

男が穴を掘る。
自宅の庭に核シェルターを作るため。
家族からどんなに止められても、男は穴を掘りつづける。

男の名前はウィリアム。
アメリカの作家ティム・オブライエンが書いた小説
『ニュークリア・エイジ』の主人公。
幼い日に見たキューバ危機のニュースがきっかけで、
生涯核戦争を恐れて生きることになった。
ウィリアムは語る、

もし何かを想像することができるなら、それは存在しうるのだ。僕はあらためてそう思う。
でもこういうのを想像してみてほしい――核戦争を。

イメージは人生を支配する。
核兵器のない世界だって、想像できたはずなのに。

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三島邦彦 13年2月23日放送



登場人物たち コペルくん(吉野源三郎『君たちはどう生きるか』)

吉野源三郎の本、『君たちはどう生きるか』。
友だちを裏切ってしまい、心を痛める主人公のコペル君に、
仲良しのおじさんはこう伝えます。

僕たちは、その苦痛のおかげで、人間が本来どういうものであるべきかということを、
しっかりと心に捕えることができる。

心が痛む時。それは、大事なことを学ぶチャンスの時かもしれません。

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三島邦彦 13年2月23日放送



登場人物たち 女房(古今亭志ん生『厩火事』)

昭和の名人、古今亭志ん生。
彼の落語に出て来る夫婦は、いつもケンカをしてばかり。
ある時、働きもせず家で寝てばかりの旦那に業を煮やした女房が、
大家さんに旦那の悪口を言いつける。
あきれた大家さんは、そんな旦那とは別れてしまえとすすめる。
すると急にもじもじし、歯切れが悪くなる女房。
なんで別れないんだ、と聞く大家さん。
すると一言、

だって、寒いもん。

落語の世界の人々は、ケンカするほど仲がいい。

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蛭田瑞穂 13年2月17日放送



BAUHAUS 1限目「開校」

1919年、近代建築の巨匠ヴァルター・グロピウスが
ドイツに設立した、総合造形学校「バウハウス」。

「バウ」はドイツ語で「建築」を表す。
同じく建築を表す「Architektur」には
アカデミックなニュアンスがあるのに対し、
「バウ」にはより手工芸的な意味合いがある。

バウハウスの設立に際して
ヴァルター・グロピウスはこう宣言している。

 建築家、彫刻家、画家、我々は皆、
 手工業に立ち返らなければならない。
 芸術家は職人の延長上にあるのだ。

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蛭田瑞穂 13年2月17日放送



BAUHAUS 2限目「Futura」

ドイツの総合造形学校バウハウスの講師、
パウル・レナーがデザインした書体「Futura(フーツラ)」。

シンプルさとモダンさを兼ね備えたFuturaは
1927年に開発されると広く普及し、
現在でもルイ・ヴィトンを始めとする
多くのブランドのロゴで使用されている。

Futuraとは英語のFutureの意味。
名前の通り、そのモダンさは21世紀の今も褪せることがない。

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蛭田瑞穂 13年2月17日放送


eston
BAUHAUS 3限目「バルセロナチェア」

20世紀のデザインに多大な影響を与えた
ドイツの総合造形学校「バウハウス」の第3代校長
ミース・ファン・デル・ローエ。

ミースは世界的な建築家であると同時に、
優れた家具デザイナーとしても知られる。

1929年に開催されたバルセロナ万博で、
ドイツパビリオンの設計を任されたミースは、
館内にスペイン国王を迎えるための椅子を設置した。

当時では珍しいスチール製のフレーム。
真っ白な山羊革のクッション。
斬新なデザインの椅子だった。

ミースの椅子は万博の終了とともに取り壊されたが、
のちに市販品として復刻された。

現在では「バルセロナチェア」と呼ばれ、
モダンデザインの最高傑作と賞されている。

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蛭田瑞穂 13年2月17日放送



BAUHAUS 4限目「山脇巌」

1919年に設立されたドイツの総合造形学校
「バウハウス」には、日本からの留学生も学んだ。
建築家の山脇巌もそのひとりである。

1930年、妻の道子とともにドイツに渡った山脇は建築を専攻し、
世界的な建築家ミース・ファン・デル・ローエに学んだ。

帰国後、山脇は日本大学藝術学部の設立に尽力し、
多くの芸術家、クリエイターを育成する礎をつくった。

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