古居利康 13年3月17日放送
Tsuyoshi Adachi as thin-p
円空と木喰 8
大正の終わりから昭和初期にかけて
活躍した彫刻家、橋下平八は、
あるとき円空仏に出会って衝撃を受ける。
「碧玉の如き清浄無垢とそれを作出する
精神の明澄さ、その技能の洗練。」
と、橋下平八の日記にある。
近代の彫刻家は円空仏の自在な鑿使いと
無垢な精神性に惹かれた。
同じ頃、日常の美を提唱した
民藝運動で知られる柳宗悦は、
四国の寺で木喰仏を発見する。
「私は彼を日本が産んだ最も独創的な
仏師として記念することを躊躇しない。」
そう柳は書いている。
けれども、円空も木喰も
芸術品をつくったわけではない。
人々の苦しみを身代わりになって
背負う、実用品としての仏像。
その造形が美しいとしても、
作者の意図するものでは
必ずしもなかっただろう。