黒澤明と七人の侍①
1990年3月26日、映画界に対する長年の功績を讃え、
黒澤明にアカデミー名誉賞が贈られた。
カリフォルニアの会場には日本からの中継映像も映され、
ふたつの「おめでとう」のメッセージが届けられた。
ひとつはアカデミー名誉賞に。もうひとつは誕生日に。
黒澤はその3日前の3月23日に
80歳の誕生日を迎えたばかりだった。
セレモニーの最後、黒澤はスピーチをこう切り出した。
わたしがこの賞に値するかどうか少し心配です。
なぜなら、私はまだ映画がわかっていない。
そんな巨匠の言葉に、会場はあたたかな拍手に包まれた。