suttonhoo
別れと家
緑の林の中に天井と床が浮かんでいる。
極限まで要素をそぎ落とした軽さ。
その家の名は、ファンズワース邸。
近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエによって、
1951年に設計された週末別荘だ。
設計を依頼したのは
女性外科医エディス・ファンズワース。
当時ミースとエディスは
施主と設計者との関係を越え、男女の愛を築いていた。
ファンズワース邸の設計が進むにつれて、
ミースは作品としての「家」に執着し、
のめり込んでいく。
そこに住むはずのエディスを、顧みることもなく。
当初の予算を大幅に上回った施工費を巡って、
エディスは訴訟を起こす。
ファンズワース邸の設計が終わると同時に、
二人は別れた。
二人の絆が消えた後に残ったのは、
世界中から愛される、近代建築を代表する作品だった。