澁江俊一 13年4月20日放送



賢治の上京

37年の短い人生で
9回も上京していた宮沢賢治。

突発的だったのは
5度目の大正十年。
父との衝突の末の
逃げるような上京だった。

印刷所で働きながら
宗教活動にも精を出し
最愛の妹トシが病に倒れたという電報が届くまで
ひと月に三千枚もの童話を書いていた。

その後も上京を繰り返しながら
いつしか賢治の理想郷は
憧れのすべてがあった東京から
イーハトーブという
心の中のユートピアへと移っていく。

その建設を夢見た故郷の岩手で
賢治は人生を静かに終える。
手がけた多くの作品が
後に日本中で読み継がれることも知らずに。

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