三島邦彦 13年5月18日放送
薔薇の季節 ウィリアム・モリス
モダンデザインの父、ウィリアム・モリス。
19世紀のイギリスで
書籍やカーテンなど日用品のデザインを洗練させ、
人々の生活における美意識を高めようとしたその活動は
アーツ・アンド・クラフツ運動と呼ばれ、
デザインの世界に革命的な影響を与えた。
モリスにとっての重要なモチーフ。
それは、植物。
草木の葉やツルをパターン化した彼のデザインは今も、
壁紙やテーブルクロスとして世界中の家のリビングを飾っている。
数ある植物の中で彼が特に愛した花、それは薔薇。
ある日、モリスの庭で育ててもらおうと
最新の品種改良をされた薔薇がモリスへ送られた時のこと。
薔薇を見るなりモリスはこう言った。
全体の形でも細部でも、道端の茂みにある薔薇より美しい薔薇はない。
どんな香りも、その芳香よりも甘くなく純粋ではない。
モリスのデザインが追い求めたもの。
それは、野に咲く薔薇のように自然なものだけが持つ
完璧な純粋さだった。