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雨が降る季節には 川上弘美
「うまい蝦蛄食いにいきましょうと
メザキさんに言われて、ついていった」
そんな一文から始まる、
川上弘美の「さやさや」というお話。
よっぱらって電車がなくなって
暗い夜道をふらふらと二人で歩き続ける。
ただそれだけの話なのに
その暗闇に飲み込まれて戻れなくなる気がするのは、
川上さんの筆力であることは言うまでもないが、
半分は食べていたのがあのグロテスクな蝦蛄(シャコ)だからじゃないかと思う。
川上さんの書く話はとにかくお腹が空く。
「センセイの鞄」で、センセイとわたしが居酒屋で頼む、
まぐろ納豆、蓮根のきんぴら、塩らっきょう。
「蛇を踏む」で、蛇が晩ごはんに並べるのが
つくね団子に、いんげんを煮たもの、おからに刺身。
雨ばかりのこの季節、食欲がないあなたには、
川上弘美の小説を、ぜひ。