眠りの話 加山雄三の居眠り
「加山、眠いのか」
『椿三十郎』の撮影中、自分のセリフがないシーンで
堂々と居眠りする加山雄三を見て、監督の黒澤明は問いかけた。
つかつかと加山に歩み寄る黒澤。一気に凍りつく撮影現場。
加山は、ぶん殴られることを覚悟した。
しかし、飛んできたのは拳ではなく、誰もが驚いたこんな言葉だった。
「じゃあ加山のために休憩!」
25歳の若手俳優1人ために、撮影は3時間もストップ。
黒澤は、とにかく加山に甘かったという。
「加山、お前は白紙でいい」
のちに日本の若大将として愛される加山の素直さを、
大切にしたかったのかもしれない。