佐藤理人 13年8月10日放送
ルーブル美術館③「サロン」
太陽が沈んだ後に現れたのは、
もうひとつの太陽だった。
フランス王ルイ14世は母を亡くしてから
すっかり元気を失ってしまった。
失意のあまり彼は
母の思い出が残るルーブル宮殿を離れ、
ヴェルサイユ宮殿に居を移した。
72年というフランス史上最長かつ、
ギネス記録になるほどの在位期間を誇り、
太陽王
と呼ばれた男の勢いは
もうそこにはなかった。
国王にかわり、
宮殿の新しい主となったのは、
フランス王立の絵画・彫刻アカデミー。
彼らは宮殿内にアトリエを設け、
2年ごとに
サロン
と呼ばれる大展覧会を開催した。
その余りの盛況ぶりを聞きつけた
ルイ14世も隠遁先から駆けつけ、
活動の成果に目を輝かせた。
やがてルーブルの中や周囲には
大勢の画家や彫刻家が住みつき、
宮殿は自由な創作活動の中心地となった。
芸術は確実に特権階級から
大衆の手に移り始めていた。