石橋涼子 13年8月18日放送
山のはなし 山本周五郎の歩く道
運は、運命だろうか。
ちがう。
運は、自分の手で呼びよせるものだ。
そう信じてひたすら努力を続けた男がいる。
作家・山本周五郎。
彼は23歳で文壇デビューを果たすが、
評価は思ったほど得られなかった。
学歴もない、師匠もいない、派閥にも属さない。
しかし、彼は書くことを選んだ。
もがき苦しみながら、ひとり、ひたすら書き続け、
自らの努力で作家・山本周五郎という存在に登り詰めた。
「ながい坂」という小説の中に
こんな一節がある。
一足跳びに山の頂点へあがるのも、
一歩、一歩としっかり登ってゆくのも、
結局は同じこと。
むしろ、一歩ずつ登るほうが
途中の草木や風物を見ることができるし、
一歩一歩を確かめてきたという
自信をつかむことができる。
努力。
それは泥臭くて、カッコ悪くて、
素晴らしい人生の喜びなのかもしれない。