2013 年 8 月 のアーカイブ

大友美有紀 13年8月4日放送



「夏の職人」金魚職人 深見光春

夏祭りで、最近は見かけなくなった金魚すくい。
愛知県弥富(やとみ)市は、金魚の一大産地だ。
スペースシャトルに乗った「宇宙金魚」も弥富の産。
深見光春は、その地で養魚場を営む金魚職人。
新品種・桜錦を生み出した。

 最初は、良質な江戸錦を産出しようと思ってたんですよ。
 桜錦のような金魚を最初からつくろうと思ったわけではない。
 でも固定化できた。

新品種の生まれにくい金魚。
偶然から生まれて、
なんども掛け合わせを重ねた。7年かかった。
自然の偶然を人間が必然に変えたのだ。

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大友美有紀 13年8月4日放送


よっちん
「夏の職人」うちわ職人 高出雅之(たかいでまさゆき)

夏、街で広告入りのプラスティックのうちわをもらう。
便利なのだけれど、自分用の特別なうちわを持ってみたい。

日本三大うちわ、香川県の丸亀うちわは、
柄と骨が一本の竹でできているものが多い。
高出雅之(たかいでまさゆき)は、竹骨だけをつくる骨師だ。
通常よりも細かく割く「小割」という技術を使う。
しなりが格段に違うという。
 
 うちわは、機能美。絵柄や形だけでなく、
 あおいでみた感触、しなりで選んでほしい。

 
職人の手によるうちわは、竹骨だけでもオブジェのように美しい。

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大友美有紀 13年8月4日放送



「夏の職人」桶職人 田上定行(たうえ さだゆき)

夏の暑い朝、打ち水をする。
昔ながらの日本の習慣。
ヒートアイランド現象で、打ち水が見直されている。
ならば、ホースやバケツで水を流すのではなく、
昔ながらの手桶で撒いてみたい。

木曽の桶職人、田上定行の打ち水手桶は、
天然の木曽さわらでつくられている。
彼のこだわりは、
一つの桶を一本の木からとった材料でつくること。

 さわらの木は不思議な木で、
 同じ種類でも色や硬さなどにばらつきがある。
 異なる木からとった材料で作ってしまうと、見た目もよくない。
 使っているうちに、ゆがみがでてきてしまうことがある。

木の個性を見極めて、桶をつくる。
だから長く使ってもらえる桶になる。
田上の桶で撒く水は、きっと自然の清流に近い。

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佐藤延夫 13年8月3日放送


dmertl
あの場所へ ルーシー・モード・モンゴメリ

「赤毛のアン」の作者、ルーシー・モード・モンゴメリ。
彼女の生まれ故郷には、世界中から観光客が集まっている。

カナダの東海岸、セントローレンス湾に浮かぶ
プリンス・エドワード島だ。
モンゴメリは、結婚するまでの36年を
この小さな島で過ごした。

 どうせ空想するなら、思いきり素晴らしい想像にしたほうがいいでしょう?

お化けの森、恋人の小径、
アヴォンリー村のモデルになったキャベンディッシュ。
モンゴメリの言葉どおりに、この島は
赤毛の少女が現れそうな美しい自然で溢れている。

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佐藤延夫 13年8月3日放送



あの場所へ 林芙美子

小説「放浪記」がベストセラーになり
林芙美子は、念願のパリへ出発した。

画家になりたかったと公言するほど美術が好きで、
敬愛する永井荷風はフランス文学者。
彼女がパリに憧れない理由はなかった。

夫を日本に残しての一人旅。
パリでは、1ヶ月の生活費をおよそ800フランに決めて
切り詰めながら暮らしていたそうだ。

海外旅行が珍しかった時代、
着物姿で下駄を履いたジャポネーズは、
きっと話題になったことだろう。

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佐藤延夫 13年8月3日放送


DonaldOgg
あの場所へ/ 寺山修司

旅をするなら、何を見ようか。
雄大な自然か、歴史を感じる街並か。

「本屋のないところには行きたくない」
そう言ったのは、寺山修司だった。

パリでもロンドンでも、
着いたらまず本屋を探し、
画集を山のように買い込む。
美術館めぐりをして、
気鋭のアーティストと話をする。

本を探し、人に会う。
風景なんて目もくれない。
それが彼の旅のスタイル。

寺山修司が密かにコレクションしていたものは、
「PLEASE DO NOT DISTURB」。
ホテルのドアに引っ掛ける、「起こさないでください」の札だったそうだ。

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佐藤延夫 13年8月3日放送


Fabrice ROSE
あの場所へ ラフカディオ・ハーン

ラフカディオ・ハーンが、まだ新聞記者だったころ。
37歳のとき、カリブ海に浮かぶマルティニーク島へ旅に出た。
コロンブスが「世界で最も美しい場所」と言った島だ。

ハーンは、この熱帯の島がとてもお気に召したようで
2年ほど住み着いて現地の人々と交流した。
東洋の島国、日本に渡ったのは、その翌年のことになる。

思えば、彼が生まれたのは、
地中海にあるギリシャ領の島、レフカダ島。
その男のDNAには、島の景色が刻まれていたのかもしれない。

のちにハーンの妻、小泉セツが、
彼の好きな場所をこのように記している。

 マルティニークと松江、美保の関、日御碕(ひのみさき)、焼津

この夏、大好きな景色を探しに行きませんか。

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佐藤延夫 13年8月3日放送



あの場所へ ジャン・コクトー

南仏、コート・ダジュール。

ピカソ、マティス、シャガールなど、
この地を愛した芸術家は多い。
ジャン・コクトーもその一人だった。
友人の資産家夫人に招待され、
初めて訪れたコート・ダジュールに彼は一目で魅了される。
そのせいで、イタリア国境に近いマントンという街には、
ジャン・コクトー美術館がふたつもあるそうだ。

 生き方の基準は、正しいか正しくないかではなく、
 美しいか否かである。

これは、コクトーが残した言葉。
もちろん、美しい風景にも囲まれていたほうがいい。

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佐藤延夫 13年8月3日放送


archer10 (Dennis)
あの場所へ ハンス・クリスチャン・アンデルセン

デンマークの首都コペンハーゲンは、
童話作家、アンデルセンの故郷だ。
港町ニューハウンには、
当時、彼の住んでいたアパートが残されている。

旅が好きだったアンデルセンは、生涯に28回も転居し、
30回の海外旅行と87回の国内旅行をしたという。
そんな彼の言葉。

 旅は私にとって、若返りの泉である。

アンチエイジングには、旅がいい。

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佐藤延夫 13年8月3日放送



あの場所へ ヘミングウェイ

キューバの首都、ハバナ。
そこから東へ10キロほどにある、
コヒマルという小さな漁村は、
小説「老人と海」の舞台になった場所だ。

実はヘミングウェイ自身、
釣り船が遭難しかけた際に助けられたのが、
コヒマルの近くだったという。
そして、そのときに出会った漁師を、
「老人と海」に登場する男のモデルにしている。

 釣れないときは、魚が考える時間を与えてくれたと思えばいい。

これは、ヘミングウェイの言葉だ。
晩年になると彼は、恩人の漁師を引き連れて、
コヒマルの沖で釣りを楽しんだそうだ。

何度訪れても、歓迎してくれる。
そんな場所が、心のふるさと。

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